1966年以来、56年間にわたって成田空港に反対してきた三里塚芝山連合空港反対同盟。現在も、空港敷地内で営農を続ける市東孝雄さんは、地域の生活と環境を守るために闘っている。

▽危機深める航空業界

 コロナ禍が長期化し先行きの見えないなか、成田空港や航空業界の危機は長期化し深刻化している。成田空港利用の80%を占める国際線旅客数は依然としてコロナ禍前の95%減が続き今後も回復の見込みはない。21年中間連結決算(4月〜9月)で前年よりやや縮小したものの230億円の大赤字が続いている。また航空会社やターミナル店舗への空港使用料やテナント料の支払い猶予や減免措置などはさらに継続し、累積で990億円(来年4月)にものぼるという。

 航空会社はさらに深刻だ。ANA(全日空)は来年3月期決算で1000億円の赤字見通しを発表した。つい7カ月前には「35億円の黒字転換」を豪語していたがあえなく破産した。ついには25年度までに全従業員の25%に当る9000人を削減すると発表した。

▽JAL赤字1460億

 JAL(日本航空)もさして変わりはない。今年3月期決算で1460億円の赤字予想。23年3月までに2500人の要員を削減。成田空港を拠点とするLCC(格安航空会社)のメインであるジェットスターも206億円と赤字を重ねている。

 さらにANA、JALはともに、首都圏空港の羽田集約に舵を切っていると言われている。

 もはや成田空港の危機は、一時のしのぎで過ごせるものではなく、経営危機・破綻となっており、抜本的な見直し・転換は避けられない。こうした状況をみれば、空港拡張・機能強化は無謀というほかない。

▽多古町長の逮捕

 そんな中で第3滑走路予定地・多古町の所一重町長が公選法違反事件で逮捕された。多古町は第3滑走路面積の3分の1を占める。町長は機能強化を推進し、第4ターミナル建設を主張してきた。多古町は成田市や芝山町と比べて固定資産税をはじめ空港利権にありつけていなかった。

 町長の容疑は、先の総選挙で「政権与党の林自民党候補なくして、機能強化は予定通り進みません」とその地位を利用して投票依頼したことだ。政府・成田空港会社(NAA)はこのコロナ禍にあっても「機能強化は予定通り実施」とくり返し、24年度に造成・設計工事に着手する予定だ。この事件は「機能強化」の推進がけっして盤石のものではないことを示した。

 新たな変異株の出現によってコロナ禍の長期化は避けられず、航空・運輸関係の混迷・混沌状況は深まっている。「観光バブル」に踊って計画された機能強化策はただちに停止すべきである。

 ねばり強く反対の声をあげ続ける周辺住民、そして反対同盟農民の農業と地域、生活を守る闘いを支援しよう。

(野里 豊)