格差社会と行政の公的責任、とくに大阪維新の政治のもとでの医療、福祉、教育などの現状を批判している、中山徹さん(奈良女子大教授)の話を聞いた。中山さんは都構想住民投票の際も市民グループとともに運動にとりくんだ。維新の“政策”、その手法などをまとめ整理した。「二重行政、都構想」などは紙面の制約から割愛した。(講演はアイ女性会議ひょうご「21平和のつどい」から。取材・整理/編集委員会・竹田)

▽IRが経済政策?

 維新がやっている経済施策とはどんなものか。維新が大阪府政、大阪市政を担ってから10年以上。主要な経済指標をみると、ほぼ低下している。人口887万人から881万人に減少、3大都市圏で大阪府だけが減らしている。域内総生産は37兆円から40・2兆円と若干増えたが、全国順位は2位から3位に。1人当たり県民所得は289万円から319万円、全国順位は9位から12位に。失業率6・9%から2・9%へ改善、順位は下から2番目だったのが最下位に。

 例外的にはインバウンドの外国人観光客。201万人から1152万人に急増した。大半はアジアから。大阪が頑張ったというよりも、関空が近くLCC便が多かったからと推測する。維新は、コロナ前から「大阪経済の活性化を進める」と万博、IR(統合型リゾート)を誘致した。つまりカジノ誘致。それで大量のお客さんを寄せ、大阪の消費、雇用も拡大しようとする。これが、維新の唯一と言っていい経済対策。その予算、財源を確保するため都構想を進める。

▽カジノ構想破綻の兆し

 IRというのは、すごく大規模。カジノだけでなく、いま最大の東京国際フォーラムを上回る6千人規模の国際会議場と1万2千人を収容する施設をつくる。宿泊施設となるホテルは3千室以上。いま大阪で最大は1000室ちょっと。これらを夢島に集中する。途方もない、アジア最大のカジノをつくるのが維新の計画だ。

 ところがコロナ禍になり状況が一変、既存のカジノ閉鎖やカジノ関連企業の業績が悪化している。一方でオンラインなどが普及、活用が広がった。オンライン型カジノも急成長している。ホテルに何日も宿泊させ、遊ばせ続けようという巨大施設型は時代遅れになりつつある。先行きはまったく不透明。もともと25年に万博をやることになっている。夢島という埋め立て地の一部を万博、他をカジノに。万博が25年、カジノも25年までにオープンする計画だった。それ自体の見通しが利かなくなった。

▽地域経済を衰退へ

 予定地は、いまも埋め立てている人工島であり交通の便もない。地下鉄を延伸する予定だが、万博が終わればお客はカジノに来る人だけ。延伸の費用、財源は、カジノに投資する企業からを当てにしていた。このままだと、行政が税金でやることになる。地下鉄駅の傍に超高層ビルを建てカジノの玄関口にする計画もある。ビル建設の応募は1社もなく白紙。それでもカジノにしがみつき、カジノで経済を進めるというのが維新の考え方だ。

 インバウンドは2000年代半ばまでは年間30%、15年には47%と伸びた。しかし、後半はむしろ減少し19年は対前年比2・2%マイナスに。20年はコロナが来なくても減少していたのではないか。どんどん増えるという状況ではない。はじめは観光客の買い物も大きかった。いまはネット通販が伸び、買い物のためにわざわざ来日しなくてもよくなっている。いわゆる爆買い状態がコロナ後も続く保障はない。そうなるとカジノもどうなのか。海外からのお客だけでなく、むしろ関西圏からの客層に軌道修正している。カジノは年間3千万人くらいの入場客を予定。東京ディズニーランド、シーよりやや少なく、大阪ユニバーサルよりはるかに多い。

 依存症問題も重大。ギャンブルでお客は儲からない、儲かるのは胴元だけ。地域で使われていたお金をカジノが吸い上げるなら、地域経済も衰退する。しかもカジノは、ほとんどが海外資本。儲けたお金は海外投資に回る。関西一円の地域経済を衰退させることでカジノを成り立たせる。それが維新の「経済対策」だ。(つづく)