
▽競争をあおる教育施策
維新は「教育政策を重視する」としている。重視とは聞こえはいいが、徹底した競争だ。大阪は独自のチャレンジテストが導入された。それを1年生から内申に反映させる。1、2年生は個人の点数が内申に直結する「個人戦」。3年生では学校を順位付けする「団体戦」。内申は相対評価5段階なら、5が7%、4が15%とかになる。中学校ではどうしても地域により学力が高い子が集まる学校、そうでない学校と地域差が生じる。良い成績の学校は例えば5を15%に、点数の悪い学校は5を3%になど相対評価の点数配分を変える。教師は学校全体の評価を上げないと良い内申点を付けられない。団体戦だから、高成績が取れそうにない子に「休んで」ということまで起こる。
1年生から内申に直結するため、1年生からテスト漬け。チャレンジ向けの塾もある。競争、競争、競争によって「学力」を上げる。それが維新の教育観、はたして学校教育と言えるのか。
▽福祉、子育てを民営化
医療、福祉政策はどうか。公的福祉を全面的に解体する。公立保育所、幼稚園を統廃合する。学童保育を民間企業に任せる。維新の巧妙なのは、公的な福祉を安く民間に委託し、浮いた財源の一部で例えばゼロ歳児保育無料、塾代助成、学校給食の一部を無料にするなど子育て世代に現金給付をする。
従来の保守政党と違う手法だ。従来の保守は公的保育所を劇的ゼロにはしない。維新は現金給付、塾代補助1カ月1万円、わかりやすい。「維新やったら有料が無料に。助成金をくれる」。市民に「改革してくれているんや」という印象を与える。
▽「不満の受け皿」
自民以上の規制緩和、カジノ・万博、大規模開発、一方で公的福祉を削る。その本質を知って支持している人たちがいる。大手企業に勤めるエリート層など、いわゆる勝ち組。その人たちは、維新の政策が自分たちの利益になると理解し支持する。
しかし、それだけでは維新の急速な伸びには、ならない。それほど多くはない勝ち組だけではなく、むしろ勝ち組でない人たちが“圧倒的”に支持しているのが、いまの状況ではないか。非正規、不安定雇用が大幅に増え、賃金も上がらない。コロナ禍でさらに不安定化し、むしろ賃金が下がる。将来への不安。そこに維新は「公務員、政治家は優遇され、福祉を受ける人が多すぎる」、だから「議員を減らす。給与カット。身を切る改革だ」と繰り返し宣伝する。 「歳費、ボーナスカット100万円」。例えば「大手企業は100億円儲けている」と言われてもピンとこないが、「100万円カット」はわかりやすい。100億円企業や富裕層はまったく問題にしない。10万、20万、100万円を言い立て、叩く。不満のはけ口をそこに向け、「改革」してくれるという幻想をもたせる。これらが重なり合い、維新への支持を膨らませる。
▽ごまかしの実態
維新の立ち位置がどこにあるかは明らか。今回の総選挙、維新は自公よりももっと「右より」の政党だ。改憲への姿勢も自公より右。政策的には新自由主義の徹底。「もっと競争、開発、もっと規制緩和、公的施策は縮小、もっと民営化徹底、自己責任」。「都構想、二重行政解消、身を切る改革、大阪では実行した。維新なら改革できる」を広がらせる。
関西のマスコミは維新を批判しない。維新を持ち上げておくと視聴率がとれる。コロナでも吉村知事はテレビに出っぱなし。ところがコロナの死者数は大阪が全国一。そういう報道はまったくなし。「知事は頑張ってる」の報道ばかり。
生活が苦しくなるほど、その不満を維新が吸収する受け皿という構造になり、「維新は改革政党」が通用してしまう。都構想の住民投票の際、維新は徹底した物量、宣伝、マスコミも使った。市民は手書き、自作のビラを露地裏まで配布し止めた。「大阪の改革」の実態を正しく暴露し伝えなければ。(おわり)