世界各地で草の根的な市民運動として取り組まれている社会的連帯経済。国によってさまざまなその目的や組織形態について、ミュニシパリズム京都の松田舞さんが、1月22日、滋賀県大津市で講演した。主催は、戦争をさせない1000人委員会・しが。

 松田さんは、2016年と18年の社会的連帯経済の国際大会(Gsef)に参加。「お金」ではなく「人」を中心とする経済について話した。

 「社会的連帯経済」とは何か。それは、フランスの紅茶工場、セネガルのインフォーマルセクター、ブラジルの土地なし農民運動、フィアレ倫理銀行、バルセロナ市の取り組みなど、すでにあるさまざまな実践をあとから定義化したものだ。だから概念から先に入るとその本当の姿を見誤ってしまう。

 社会的連帯経済は欧州が中心のように思われがちだが、それは欧州からの発信量が多いからという理由にすぎない。アフリカ、中南米、アジアにもそれを実践している例は数多くある。

 「社会的経済」は、1980年代、フランスのミッテラン大統領がアメリカやイギリスの新自由主義政策にたいする対抗策として推進したもの。一方、「連帯経済」は、1990年代に中南米で新自由主義による「繁栄」から取り残された貧困層が自前の経済活動の実践として始めたものだ。

 当初は「北=先進国」の社会的経済、「南=途上国」の連帯経済という南北問題の図式で対立的とらえられる面もあった。しかし両者の対話・交流・連携がすすむなかで「社会的連帯経済」という包括的な概念が生まれてきたのだ。

 韓国のソウル市は行政が社会的連帯経済の推進してきた。欧州のミュニシパリズム(住民主体の自治体運動)に見られるように、こうした取り組みは国政よりも地方自治体の方で成功している。こうした自治体では、市民活動家の多くが地方議会の議員となり、市民活動が地方行政が一つながりになっている。

 講演後の討論では、日本では個々の運動はあっても、それらをつなぐネットワークが貧弱なため、その影響力が小さいことなど、現状と課題をめぐって活発な議論が行われた。(多賀信一)