「沖縄の米軍基地問題を自分事として考えて欲しい」。沖縄県は辺野古新基地などの議論を深めるため、玉城デニー知事が「トークキャラバン」(オンライン)を、1月27日福岡、2月9日神戸で開催した。玉城知事の講演は、基地問題、日米安保体制や日米地位協定、民主主義や地方自治など多面にわたった。その要旨を紹介する。(文責/本紙編集委員会)

広大な訓練水域・空域

 沖縄の面積は日本の国土の0・6%にすぎませんが、70・3%の米軍専用施設が集中しています。沖縄の米軍専用施設は1万8484ヘクタールです。これは神戸市の約3分の1であり、その広さをイメージしていただけるのではないでしょうか。
 沖縄には陸に米軍基地があるだけではなく、沖縄近海には、27カ所の水域と20カ所の空域が米軍の訓練区域として設定されています。広大な訓練水域・空域には、県外の米軍基地の航空機が飛来し、沖縄の米軍基地で離発着することによる航空機騒音の激化などをもたらしています。復帰後、訓練水域・空域はほとんど減っていません。

航空機事故・環境汚染

 訓練・演習に伴う航空機事故も後を絶ちません。航空機事故は、一歩間違えれば人命にかかわるものですが、一昨年と昨年の主なもので5件の航空機事故が起きています。
 基地は、環境の面でも深刻な影響をもたらしています。普天間飛行場や嘉手納飛行場周辺の川や湧き水から、有害な有機フッ素化合物PFOSが、国の暫定指針値を超えて検出されています。20年4月には普天間飛行場からPFOSを含む泡消火剤14万リットル余が基地の外に流出しました。
 このような沖縄の基地負担の状態は異常であり、到底、受忍できるものではありません。沖縄県は、本土復帰50年を迎えるにあたり、「在日米軍専用施設面積の50%以下」「訓練水域・空域の大幅な削減」などの6つの項目を、昨年5月、日米両政府に要請しました。

無意味な埋立工事

 辺野古新基地建設は、普天間飛行場の代替施設などではなく、新たな基地建設であり、沖縄の過重な基地負担や基地負担の格差を永久化、固定化するものです。
 辺野古・大浦湾は、生物多様性の極めて高い海域です。この海域では、ジュゴンをはじめとする絶滅危惧種262種を含む5300種以上の生物が確認されています。埋め立て予定地には軟弱地盤や、2つの「活断層」があり、建設予定地として適切ではありません。
 このように周辺環境に甚大な影響を与え、無意味なものなる可能性がある埋立工事の継続は、行政として認められません。「辺野古が唯一の解決策」ではない。固定観念にとらわれず、普天間飛行場の県外、国外移設を検討するべきです。これが沖縄県の考え方です。

子や孫のために行動を

政府は沖縄県の埋立承認撤回(18年8月)を行政不服審査法を使って取消しました。これに110人もの行政法学者が「制度の濫用である」と声明を出しました。地方自治の観点からきわめて大きな問題です。
 基地負担の解決は日米安保の一方の当事者・米国政府に対しても、沖縄県は直接訴えています。
 日本の安全保障は、沖縄だけの問題ではなく全国の問題です。他人事ではなく自分事として考えていただきたい。私は、地域の皆さんと、沖縄の基地問題を通して民主主義や地方自治の問題を共に考え、私たちの子や孫のために、共に行動することを呼びかけます。