「9000円では話にならない!」岸田政権が打ち出した介護職の処遇改善支援金のことである。
2月6日、大阪市内で開かれた集会で、大阪社保協・介護保険対策委員長の日下部雅喜さんは、この「処遇改善」を「しょぼいし、詐欺的だ」と徹底批判した。

一律支給ではない

まず月額9000円という額がしょぼい。しかも一律に支給されるわけではない。
この支援金は介護職員の収入を3%程度引き上げるための措置を今年2月から実施するための必要な経費を都道府県に交付するもの。適用されるのは2月から9月までの8カ月間。10月以降は、臨時の介護報酬改定を行い、同様の措置を継続するというが、介護職員数に応じて交付率を設定し、各事業所の総報酬にその交付率を乗じた額を支給するという。
補助金額は毎月の総報酬×交付率によって算出されるが、問題は次の一文だ。「これにより標準的な職員配置の事業所で、介護職員当たり月額9000円相当の補助金が交付されます」。つまり標準的な職員配置以下になれば9000円を受け取ることはできない。政府が発表した補助金案を読んでも、ほとんどの事業所は支給される補助金がいくらになるかはわからないだろう。
にもかかわらず、補助金の支給を受けるためには、2月から賃上げを実施しなければならない。支給開始は6月からだというのにである。小規模な事業所に賃上げ分を立て替える体力はない。

利用者負担が増加

これによって利用者負担が跳ね上がることも必至だ。2〜9月の介護職員処遇改善支援補助金は国庫負担100%(約1000億円)で、利用者負担はない。しかし10月からは介護報酬の「新たな処遇改善加算」として国庫負担25%、自治体25%、介護保険料50%の負担となっており、利用者負担は1〜3割に。
10月からの介護報酬はまだ決まっておらず、「予算案」はこれから国会で審議される。まさに「しょぼい」に加えて「詐欺的」な賃上げだ。
集会で、ケアマネージャーの男性が発した言葉が胸に刺さった。「われわれは1000円、2000円の賃上げの話をしてるんじゃない。生存権の話をしているんだ」。     (堀ちえこ)