先日オンラインで、新潟県において、介護や福祉事業の生活協同組合を運営されている高見優さんの講演を聞いた。テーマは、『日本における陣地戦の可能性を探る』というもので、高見さんが自らの経験を話されました。
お 話は、多岐にわたるものでしたが、その一つは「協同労働」の実践の話でした。これまでに30近い介護事業所等の立ち上げに参加し、それらを生活協同組合で運営しているそうです。普通の市民が事業を立ち上げ、運営して、地域と結びついていくあり方をわかりやすく報告していただきました。「出資・労働・経営」が三位一体で進められる「協同労働の協同組合」原則を語られる姿が印象的でした。現在は、この2年間の新型コロナの流行の中で、困窮者支援のためのフードバンク事業の役割がひろがり、企業や行政ともコラボしながらネットワークを広げているということでした。
 私が印象に残ったのは、「自立・自律した事業・運動拠点をつくり維持する」ためには、2つのことが大切で、その一つが地域に根ざした金融システム(銀行の役割)ということであり、もうひとつが地域づくりの主体形成、協同の社会運動・事業の実践的な学びの場(学校の役割)というものでした。生協運動においても、この部分は、非常に重要な点であることを強調されていました。私自身の経験においても、うなづけるものでした。
 お話の後半では、市民の自立的な政治参加の話題でした。日本の司法制度のなかで裁判員制度がはじまって12年になるが、私たち自身の課題として、さらに陪審制度をめざしていくべきという提起でした。「民主社会において自治を担う責務は、主権者たる市民にあり、市民は政治・経済・文化の主人公(主体者・責任者)である」と言うことが強調されました。
 私たちは、これまで「司法・立法・行政」という権力機関に対して、それ自身を「いかがわしいもの」「できれば関わりたくないもの」として考えてきたのではないか。できるだけそれから距離をとろうとしてきたのではないか。それでいいのかと。市民が普通に裁判に参加して、評決の責任をとることを避けてしまっている。これで社会の主体者になれるのかと。この問いかけは、本当に大きなテーマであると思いました。「陣地戦」とは、敵か味方かでなく、自立か依存かなのだと。