
ロシアの軍事侵攻から20日間、ウクライナの民間人犠牲者が増え続けている。国連人権高等弁務官事務所は、子ども48人をふくむ民間人691人が死亡し、1143人が負傷したと発表した。ただし、激しい戦闘が続いている親ロ派支配地域の情報が遅れているため、実際の犠牲者数はもっと多くなるという。
すでに300万人以上がウクライナから脱出したといわれている。これ以上、住民の犠牲者を増やしてはならない。ロシア軍は、都市部への爆撃や砲撃を直ちにやめるべきだ。このかん当事者間の停戦交渉が行われているが、双方の主張に隔たりが大きく、合意に至るまでの道のりは険しい。
それでも停戦の実施が、最優先課題であることはまちがいない。戦闘が長引けば長引くだけ、住民の犠牲が増え続ける。
米国のバイデン大統領は、ウクライナに対して12日と16日に計約10億ドル(約1180億円)の追加の武器支援を決めた。それはロシア側の態度を硬直化させ、停戦実施をいっそう難しくするだけである。
ウクライナ危機に便乗
日本政府は8日、ウクライナに自衛隊の防弾チョッキとヘルメットを提供するため、「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定した。これは戦時下の当事国に対する事実上の軍事支援である。ウクライナ危機に便乗して、戦後禁じられてきた海外での戦争に道をひらく暴挙であり、断じて許されない。
また安倍元首相は2月27日、テレビ番組で米軍の核兵器を国内に配備する「核共有」について、「国内で議論すべき」という考え方を示した。被爆国である日本の元首相が、核兵器禁止へと向かう国際世論に反して、自国の核保有につながる発言を行ったのだ。3日には、日本維新の会が「核共有」の議論を政府に求める提言を行った。
ウクライナで停戦が求められている時に、「核保有」の議論など言語道断だ。
(坂口竜一)