
関西生コン弾圧の本質
賃金など労働条件をよりよくするため活動をしてきた労働組合を潰すという、関西生コン弾圧の本質を鋭く深く突く労作です。
著者はジャーナリストであり、現場に密着しています。ミキサー車(生コン輸送車)にも実際に乗り、運転手の生の声を聞き、ストライキの現場に行って実感しながら書いています。組合側の主張だけではなく、経営側の見解も聞くために単身生コン経営者団体にも乗り込んで取材しています。
分断乗り越え団結
日本の賃金はOECD諸国中最低であり、この20年間上がるどころか逆に下がっているという現実。しかも、年収200万円以下のワーキングプアとよばれる労働者は1139万人にも達しています。
どうしてこんなことになったのか。大きな原因の一つが、労働組合の弱体化です。連合に加盟する大きな単産の労働組合が、自分たちの身を守るために資本の非正規雇用を許し、非正規雇用の労働者の身分保障や労働条件をよくするための努力をするどころか、その人たちの組合加入を拒絶する。自ら「分断」を生み出し、労働者全体の団結を破壊しているのです。
そういう中、関西生コン支部は中小零細企業の経営者と手を組み、大手ゼネコンやセメントメーカー資本から金を引っ張り出して、中小零細企業で働く労働者の賃金を上げてきました。それをゼネコンやセメントメーカー資本は絶対に許せなかったのです。
警察・検察・ゼネコン・大手セメント資本などが一体になって、国家意思として関西生コン支部に襲いかかってきました。ヘイト集団やネットを使って関西生コン支部を「怖い組合」「暴力集団」というイメージを世間に植え付けます。警察・組織犯罪対策課が暴力団「壊滅」作戦で使った手法によって、労働組合としての要求を「恐喝」、ストライキを「威力業務妨害」と置き換え、組合員を大量に逮捕しました。
逮捕、弾圧によって、 関西生コン支部に協力的だった経営者も黙り込んでしまいます。それまで共にゼネコン・大手セメント資本と対決してきた建交労など他の組合なども寝返って相手の陣列に加わり、関西生コン支部叩きを始めました。
分断を乗り越え、違いを超えて団結する力が求められています。昨年12月19日には全国で「はねのけろ!反弾圧アクション」が取り組まれ、大阪では700人が集会とデモ。今年早々1月1日には400人が大阪府警前抗議闘争に集まりました。
大阪府労働委員会では、ほとんどが組合側勝利命令を得ています。労働組合法の立場に立てば、当たり前のことです。その「当たり前」をひっくり返そうというのが、関西生コン弾圧です。
武健一・前委員長の「恐喝」(解決金を経営者から脅し取ったとする)は一審無罪となり、加茂生コン事件(保育園通所に必要な就労証明書を求めたことを「恐喝未遂」とした)の控訴審は無罪判決を勝ちとりました。力を合わせれば必ず勝てる闘いです。共に! (蒲)