5月10日、韓国大統領に就任した尹錫悦(ユンソンニョル)氏。新政権の行方について、在日韓国研究所代表の金光男さんが分析した。(6日、大阪市内で講演/文責・本紙編集委員会)
この新政権の行く末は前途多難である。尹氏の当選直後の支持率は52・7%だった。同時期の支持率は李明博氏が79・3%、朴槿恵氏が64・4%、そして前大統領の文在寅氏が74・8%だった。尹氏の数字は格段に低いと言わざるを得ない。
尹氏を支持できない理由の1つは大統領執務室移転問題。2つ目は人事。3つ目は独断的だということだ。尹氏は大統領執務室を青瓦台から光化門の政府庁舎に移すと公約した。これは、文在寅前大統領が警備上の理由からあきらめた案件で、最初から実現不可能な公約だった。そこで出てきたのが、ソウル籠山にある国防省庁舎への移転案。それには、国防省の移転費が必要になる。官邸移転費用が膨らんでいることに国民が怒っている。
韓国の国会議席数300のうち172議席を野党の「共に民主党」(以下、民主党)が占めている。民主党が同意しなければ法案は成立しない。また、韓国の閣僚任命権は国務総理(首相)が持っているが、国会人事聴聞会で国務総理が認定されなければ組閣できない。そこで尹氏は党派色が薄い元国務総理の韓悳洙(ハンドクス)氏を指名した。しかし彼は元国務総理の地位を利用して資産を4億円増やしていた。そういう人物を指名したことに国民が批判の声をあげた。
慌てた尹氏は文在寅政権最後の国務総理、金富謙(キムブギョム)に「留任してくれ」と言い出した。政権発足前からドタバタ劇を演じている。
尹氏は、5月6日、政策と予算を発表した。労働時間(週52時間)の柔軟化と重大災害処罰法の見直し、脱原発政策の転換、韓米同盟最優先だ。
対北朝鮮政策では「北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」によって朝鮮半島の持続可能な平和と安全を実現するとしている。18年南北板門店宣言や朝米シンガポール共同声明で合意されたのは「朝鮮半島の非核化」なのだが。
ウクライナ事態、北朝鮮の核、ICBMモラトリアム破棄と朝鮮半島と東アジアの緊張が激化している。武力で平和を築くことはできない。外交と対話で解決しなければならない。