沖縄は「施政権返還、本土復帰50年」を迎えた。今なお在日米軍基地面積の70%以上が沖縄に集中し、巨大な新基地が建設されようとしている。5月、玉城知事は、72年の屋良建議書「基地なき島に」を再び盛り込んだ建議書を政府と国会に提出した。「安保・基地は沖縄の問題」なのか。
伊東武是(たけよし)さん(元裁判官)が市民運動の学習会で話した「琉球弧における基地建設、新安保法の集団的自衛権行使の危険性」などを寄稿してもらった。(ブログ「隠居老人の日中不戦祈願」参照/リード、小見出しは本紙)

みなさんは、台湾有事という言葉を聞かれたことがあると思います。中国と台湾との間で武力が衝突し軍事的紛争がはじまる事態を指しています。そして、この衝突は中国が武力で台湾の独立を阻止しようとする意図から生まれるとするのが一般的です。
「台湾有事は日本の有事」という言葉も聞かれたことがあるのではないでしょうか。中国と台湾との武力衝突が日本に影響を及ぼし日本も軍事的に対応しなければならなくなる危険な事態を指しているようです。ところが、台湾有事がなぜに日本の有事となるのか、どういう経過でそうなるのかについては、必ずしも明確ではありません。
 
勇ましい安倍演説
 
安倍元首相は、昨年12月に台湾に向けオンラインで講演し「尖閣諸島や与那国島は、台湾から離れていない。台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本の有事であり、日米同盟の有事である。この点の認識を中国の習近平主席は断じて見誤るべきではない」と勇ましい演説をしたそうです。
沖縄の南西諸島が台湾と地理的に接着しているから有事になるかのようです。これは分けのわからない話です。地理的に近い位置にあるからという、それだけの理由で中国が攻撃してくるとは思えません。攻撃すれば日本から反撃されます。台湾との戦闘に精一杯なのに日本までも敵に回すことは中国にとって得ではありません。
 
日本が軍事行動を
     起こせば
 
ただ、日本が台湾を支援しようとして中国攻撃の準備をしているというのなら、たしかに中国はそれを阻止しようとして、たとえば自衛隊基地のある南西諸島に先制攻撃してくることはあり得ます。
そうです。台湾有事が日本の有事というのは、台湾にことが起こった場合に、日本が台湾を支援して軍事行動を起こすぞという姿勢を示した場合に起こる事態なのです。このことを私たちは十分に自覚しているでしょうか。安倍さんが尖閣や与那国島が台湾に近いと地勢的な状況だけをのべ、日本側の姿勢に触れていないのは、何かをごまかそうとしているのです。比喩的に言えば、日本有事は天災ではなく人災なのです。
沖縄には既存の米軍基地に加え、ここ2、3年前から奄美大島、馬毛島、宮古島、石垣島など琉球弧の島々にミサイル発射に重きをおいた自衛隊の基地が目白押しに新設され、増強されてきました。これら自衛隊の新基地は、台湾有事に連動する日本有事に対応しようとするものであることは間違いないと思います。
 
集団的自衛権の
  行使から戦争へ
 
まず私たちは、日本という国が戦争と平和の問題について、そもそもいかなる姿勢にあるのかを改めて確認する必要があります。憲法9条です。戦争をしないという国家方針、国是が大前提にあります。
特殊な自衛のためを除いてすべての戦争を放棄したその国是は、当然ながら他国どうしの戦争の一方に味方して武力行使の形で関与すること、すなわち集団的自衛権を原則として禁じていると考えられます。
 
新安保法制を忘れない
 
7年前、大きな国民的規模となった新安保法制反対運動がありました。忘れることはありません。「集団的自衛権反対、よその国の戦争にわが国を巻き込むな。NO WAR、戦争法反対」というものでした。残念ながら新安保法は成立してしまいました。しかし、この7年間、この法律が適用される危険な事態は起きてきませんでした。私たちもこの法制のことを忘れかけています。
「台湾有事は日本有事」と呼ばれる状況は、何を隠そう、私たちが油断して忘れ去られようとしている戦争法・新安保法がまさに適用され、これに基づいて自衛隊が出動、戦争開始となろうとしている、そういう事態なのです。    
      (つづく)