
4月25日、千葉地裁で耕作権裁判が開かれた。
耕作権裁判は、市東さんの耕作地を「不法耕作地」として、成田空港会社(NAA)が明渡しを求めている裁判。もちろん市東家が百年にわたって耕作を続けてきた農地であり、不法耕作地などではない。「不法耕作」の根拠とする「同意書」「境界確認書」の偽造が明白となる中、NAAは証拠隠しに終始。千葉地裁・東京高裁の文書提出命令決定にも「関係文書・交渉記録はない」と、その提出を拒否してきた。
そしていま、旧地主との交渉に当たってきた旧公団職員の証人採用をめぐる攻防が続いている。不法耕作地であるという根拠となる証拠を出さない、証人も出さないでは裁判自体が成立しない。NAAは訴えを取り下げるしかない、という問題である。NAAは「交渉記録は残っていない」とか「交渉担当の職員は亡くなっているのでわからない」と言い逃れようとしているが、今回の裁判で、当時の公団用地部には20人程度の職員がいたことが判明。弁護団は言い逃れを絶対に許さないと、敵性証人の採用を、語気を強めて千葉地裁、NAAに迫った。
次回裁判は8月22日(月)。千葉地裁がこの問題をどう判断するのか注目である。
密室の進行協議
しかし千葉地裁は6月20日に進行協議(傍聴者を含めた裁判の場ではなく、裁判所・原告・被告3者だけの密室協議)を指定した。裁判・口頭弁論の場では口を閉ざし、進行協議で物事を事実上決定していくようなあり方を絶対許してはならない。そうでなくても今回の裁判でも大法廷にも関わらず、一般傍聴席は約30人に制限、コロナ禍での規制が解除されたというのに、裁判は別。「裁判公開の原則」なのに嘆かわしい状況である。さらに今国会ではコロナ禍を奇貨として民事裁判の「リモート審理導入」が進められようとしているという。
新やぐら裁判 控訴審結審 9月2日判決
新やぐら裁判の控訴審第3回口頭弁論が5月9日、東京高裁で開かれた。
昨年10月の第1回口頭弁論で、反対同盟・弁護団が控訴趣旨を論述、3月の第2回では弁護側証人3人が証言、そして今回の最終弁論。
この裁判は、市東さんの天神峰農地に建つ監視やぐら、看板の撤去を求めて、NAAが起こした裁判。そもそも、NAAが、市東さんの同意もなくかすめ取った農地の所有権や運用に口を出す権利はない。焦点となったのは、NAAの農地の違法な取得に関わった旧公団職員の証人採用・証言であるが、一審に続き高裁でもこれを拒否し、審理を打ち切った。
最終弁論では、反対同盟の萩原富夫さんと弁護団全員から2時間にわたって、市東さんの耕作地のこと、やぐら・看板と耕作権との一体性、違法な買収、成田空港拡張計画の破綻性など、多角的視点から論述が行われ、一審判決の破棄を求めた。その後裁判長は、判決日を9月2日と期日指定。NAAは仮執行付きの判決を求めている。空港にとって、市東さんの農地取得は何ら必要ない。NAAがなすべきはコロナ禍で空港破綻が迫っている現実を直視することだ。(野里豊)