食べものから学ぶ世界史(平賀緑著 岩波ジュニア新書 2021年)

 『食べものから学ぶ世界史』の著者、京都橘大学教員・平賀緑さんが滋賀県大津市で講演した。(5月21日、戦争をさせない1000人委員会しが主催の連続市民講座)
 ウクライナ戦争が始まって小麦の値段が急騰しているが、世界には備蓄もあり、ウクライナ産の比率を考えても、直ちに問題になることはない。問題は、食の金融化、グローバル化が進んでいることだ。小麦の価格が決まっているのは遠くはなれたシカゴの市場だ。4つのグローバル企業が世界の穀物の90パーセントを支配している。
 こうした資本主義による人間と地球の破壊は、大航海時代と産業革命の頃から始まった。奴隷労働による小麦や砂糖の大規模生産と都市労働者の大規模消費の始まりである。主食がジャガイモではなくて小麦なのは支配者に都合がよいからだ。備蓄が容易で、計量も簡単だ。コメについても同じことが言える。
 1870〜1914年が、第1次フードレジームと呼ばれる。新大陸で大量生産された小麦などはヨーロッパの賃金労働者向けの安価な食料として輸入された。このようにして資本主義的な生産を支える国際的分業貿易体制が形成された。
 第2次フードレジームは1947〜73年。アメリカを中心に、大規模経営で過剰生産された小麦や大豆などが、畜産業や加工食品産業の複合体を通して、日本やヨーロッパ、途上国に広がった。こうした農業食料関連の多国籍企業が存在し、金融化、デジタル化、グローバル化が進んでいる。昨年、ビルゲイツが米国最大の農地面積を所有する大地主になった。
ネガティブな話だけではない。滋賀県では、給食の小麦が100パーセント県産になった。これは誇るべきことだ。地域に根ざした食と農から、世界のシステムを変えていこう。