樹下に佇む 
             渡辺信雄 
 
  伐られた腕の断面を 剥き出しに
  無言で天へ突き出している
  みずみずしい 若葉も
  落とされてしまって
  誰が邪魔と言ったのか
  切断された
  樹の呻き声を
  聴きながら 歩く
  切断される前の樹の枝には
  鳥たちが止まり
  歌を唄っていた
  虫たちもやってきた
  人は木陰で憩い 溜め息をつき
  樹がそれを吸ってくれた
  葉のない樹の下で
  空を見上げ 佇んでいる