『世界』6月号の特集は「核軍縮というリアリティ」だった。ロシアのウクライナ侵攻から3日後、プーチンが核兵器の運用部隊に「戦闘警戒態勢」を指示した。第4次中東戦争(73年)の際、ソ連の介入阻止のためアメリカは5段階のデフコン(防衛準備態勢)を4から3に引き上げ、現場発射管制官に「50発のICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射できるよう最終準備せよ」の命令が届いたという。ロシアも同じような態勢に入ったと思われる。
プリンストン大学によるロシア・NATO間の核戦争シュミレーションでは、1発の核の警告発射を引きがねに世界規模の核戦争となり、数時間で9000万人の死傷者が出ると予測。ICANの川崎氏は、「この核戦争への可能性と背中合わせの崖っぷち(ウクライナ戦争)にいて、まだ核抑止論を言うのか。それがいかに危険で無責任な主張か」と言う。核抑止論は、「核のボタンを握る国家指導者が全情報を正確に把握し、理性的な判断をするという大前提があって初めて成り立ちうる」「その前提がそもそも成り立たない。核なき安全保障の枠組みを」と述べる。
米国が02年にABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)から撤退、19年に中距離核戦力全廃条約から離脱し、20年に世界終末時計はこれまで最短の100秒となった。この6月に核兵器禁止条約の第1回締約国会議が、8月に核兵器不拡散条約の運用検討会議がある。そんなとき、被爆国日本では自民党や維新などから「核兵器共有」を求める声が上がった。世界に衝撃が走ったという。
日本政府は核兵器国と非核兵器国の「橋渡し」論を言い、核兵器禁止条約に加わらない。核禁条約を協議した国連会議。日本の席には大きな「平和の折り鶴」が置かれた。日本こそ、先頭に立って欲しいとの「祈りの鶴」だった。
日本の市民は、核廃絶を願う人びととともに、核と核戦争を絶対に許さない世界にする使命を負っている。世界には約1万数千万発の核弾頭がある。核をゼロにするか、人類をゼロにするかの深刻な分岐点に立っている。(村井 勝)