世界を駆けめぐったコロナ禍で、2020年の日本の女性の自殺者数は935人(15・4%)増え7026人に。男性は微減だったが、女性が大きく増えたため、日本全国の自殺者数は11年ぶりに増加に転じた。災難は平等にふりかかっても、その被害は平等ではない。常に弱いものに集中する。
低賃金の非正規雇用で働く女性たちは、次々と仕事を奪われていった。今でこそ、非正規雇用問題は大きな社会問題となっているが、ほぼ女性だけに非正規雇用が強いられていた時代には、「社会問題として認識」されることもなかった。当たり前だったのだ。非正規雇用問題はまずもって女性問題としてあった。
総務省の労働力調査によれば、1990年の非正規雇用の割合は男性が8・79%、女性が38・11%。このときすでに女性は男性の4倍だった。そして2020年では、男性が22・3%、女性が56・01%。男性の2割強が非正規雇用というのも大変な問題だが、女性は実に6割に迫っている。若者に限るともっと過酷である。
生涯賃金格差1億円
2021年の平均賃金でみると男性が年間532万円。女性がその約半分の293万円。正社員に限った場合でも女性は男性の7割でしかない。
40年勤続した場合の生涯賃金では1億円の格差ができる。女性は定年まで働いたとしても、年金では生活できない。食べていけない。自立できない。コロナ禍で住居を追い出されてホームレスとなる女性が増えている。ホームレスの女性が近所の男性から「見苦しい」と撲殺されるという痛ましい事件も起きている。彼女は働いていたのにもかかわらず。
深刻な格差社会においては、男性の「優位性」も失われつつある。「非正規雇用、不安定雇用は自分には関係ない」と侮っていた男どもも、いまやいつクビになるのかもわからない。たとえ正社員でも資本による強労働・強搾取はとどまるところを知らない。
家父長制の価値観
保育や介護など多くの女性たちが就労しているケア労働は、専門性を持つ重労働でありながら、その平均賃金は全産業平均より月10万円も低い。これは「子育てや親の介護は嫁の仕事。無償労働が当たり前。それが日本の美風」という明治憲法下の家父長制の価値観にもとづくものだ。今でも、「ホームヘルパーを使うなんて家の恥」「自分の介護は嫁にしかさせない」と主張する男性は少なくない。こういう男こそ、夫婦げんかで女性が文句を言うと「悔しかったら俺と同じくらい稼いでこい!」と怒鳴るのだ。賃金が低いのは女性が悪いのか! 社会にはびこる女性差別の問題ではないのか!
2022年版の男女共同参画白書によれば、日本の女性の家事・育児時間は男性の5・5倍。先進国平均では1・9倍である。ここでも日本の後進性は明らかだ。これは男性の差別意識だけの問題とは言えない。男性労働者に長時間労働が強いられていることの反映でもあるのだ。
各国の男女平等の達成度を示すジェンダーギャップ指数2021をみてみよう。これはジェンダー格差の「経済」「政治」「教育」「健康」のデータを数値化して順位を示したものである。日本は156カ国中120位である。先進国では最低レベル。「GDP世界第3位」が笑わせる。
男女平等を謳った憲法24条は難産の末に制定された。日本政府側が最も抵抗したのは、天皇条項ではなく、24条だった。日本政府は「男女平等は日本の歴史や文化から見て、日本の風土には合わないから削除すべきだ」と強硬に主張した。いかなるときでも米国に追随・従属の日本政府が、「女性差別だけは残してほしい」と夜中の2時までがんばったというのだ。次回はこの24条について。