
「東リ」(住宅関連企業)の偽装請負事件で昨年11月、大阪高裁は原告の元請負労働者5人の訴えを認め、一審神戸地裁の判決を取り消し原告逆転勝訴の判決を下した。
東リ側が行った上告、上告受理申立てに対して6月7日、最高裁は上告棄却・上告不受理を決定、大阪高裁判決が確定した。判決は、東リが長年にわたり偽装請負を行なっていたと認定し、労働者派遣法の「労働契約申込みみなし制度」を適用し、原告5人が東リとの間で雇用関係にあると認めた。同制度が裁判で適用されたのは全国初。
始まりは、17年3月。原告5人は請負会社の従業員として東リ伊丹工場の化成品工程などで働いていた。違法派遣にあたる偽装請負だった。原告らは、東リの違法を正し安定雇用を求めるため偽装請負を告発。同時に、東リに対し「労働契約申込みみなし制度」に基づき、直接雇用を求めた。東リは違法を認めず、声をあげた5人の組合員を職場から追い出した。
一審の神戸地裁判決は、ほとんど裏付けのない東リの主張をだけを鵜のみにしたものだった。二審の大阪高裁では、偽装請負の実態を認め、原告5人の直接雇用を認める画期的な判決となった。東リは上告していた。
大きな一歩
非正規雇用の拡大に歯止めをかけ、雇用の安定を実現することは労働運動の急務である。そのためには労働者派遣法と労働契約法の無期転換ルールの徹底が必要だ。
東リ偽装請負事件の完全勝利が最高裁で確定したことは、非正規労働者の処遇改善にとって大きな一歩だ。 (高崎)
【労働契約申込みみなし制度】15年10月1日施行。改正労働者派遣法40条の6。違法派遣・偽装請負を受け入れていた企業は、その派遣労働者に対し労働契約を申し込んだとみなされる。労働者が承諾の意思を示せば、労働契約が成立する。
【偽装請負】契約が業務請負、業務委託、委任契約もしくは個人事業主であるのに、実態が労働者供給、あるいは供給された労働者の使役、または労働者派遣として適正に管理すべき状況のこと。東リのケースでは業務請負契約となっていたが、大阪高裁は実態が労働者派遣であると判断した。