岸田政権は、ロシアのウクライナ侵攻を機に軍拡を進めようとしている。この動きを関西大学教授の高作正博さん(憲法学)は、「かつての侵略戦争を反省して、軍隊を放棄する憲法を定めた国が、ウクライナを念頭に軍拡をすすめるのは余りに憲法からかけ離れた議論である」と批判した。(6月19日、大阪市内)
高作さんによれば「集団的自衛権を容認した段階で、これまでの政府見解はすべて意味を失った」という。これまでの日本国家体制そのものが変ってしまったのだ。
集団的自衛権の行使とは、同盟国を防衛するということだ。たとえば米国を防衛するためには、どれほどの武力が必要か。自衛隊の総力を投入しても足りないだろう。つまり武力行使の歯止めがなくなったのである。
政府は、武力行使を目的とした海外派兵は禁止としてきたが、集団的自衛権の行使は、最初から他国への武力行使を目的として自衛隊を出動させるものだ。それにとどまらず、ここで一気に戦争で勝てる国にしようという動きが進んでいる。改憲がなされていない段階で攻撃型の自衛隊に変質しているのだ。いわゆる「現実主義」に対して、高作さんは、「個人の生命・健康・自由、反戦平和という価値観こそが重要だ」と述べた。