地球物理学者・巽(たつみ)好幸さんの講演、「迫りくる巨大地震と兄弟噴火」を聞いた(6月12日、大阪市内)。地震列島日本に原発を作るべきではないという話はこれまで何度も聞いたが、「原発銀座と呼ばれる若狭湾とびわ湖、伊勢湾を結ぶラインで、日本列島がくびれているのはなぜか」という話に驚愕した。
 若狭湾—びわ湖—伊勢湾を結ぶラインは沈降帯と呼ばれる。そこでは文字通り地盤沈下が進行しているという。これは、地球の表面を覆う厚さ数十キロほどの岩盤(プレート)の沈み込みによって、地殻の下にあるマントル物質が引きずり込まれて起きる。急角度の沈み込みの場合はマントル物質が「補償流」によって補われるが、低角度の場合は、それが十分ではなく、地殻が下向きに引っ張られるために、地盤が沈降し海面より低くなってしまう。そのようにして若狭湾はできたというのだ。若狭湾の南側がリアス式海岸になっているのは地盤沈下のためだ。
 百万年以上かけて若狭湾—びわ湖—伊勢湾を結ぶラインは完全に海面下に沈み、日本列島は分断されるという。百万年後だからといって安心はできない。この地域はもっとも地殻変動が進行している地域なのである。いつ大地震がおきてもおかしくない。
 火山の寿命は長いもので数百万年続く。日本では数十万年程度の寿命の火山が多い。1万年前以降に噴火した山を活火山と呼んでいるが、それ以外でも噴火の可能性がある。原子力規制庁は「巨大噴火を予知し事前に原発を停止する」というが、それは不可能だ。
     (池内潤子)