岸田首相は、14日の記者会見で、安倍元首相の「国葬」を今秋行う方針を表明した。安倍氏の「国葬」には断固反対である。それは安倍氏が総理在任中に行った民主主義への破壊行為を正当化し、その追認を強制するものだ。そればかりではない。今だ解明されていない権力犯罪の数々を不問に付し、安倍氏をはじめとした権力犯罪の関係者たちを免罪するものだ。
民主主義破壊の最たるものは、集団的自衛権の行使を可能とした閣議決定(2014年7月)だ。「憲法9条は、海外での武力行使を禁じており、集団的自衛権の行使は認められない」としてきた政府見解を一片の閣議決定で覆したのである。
それを可能にしたのは首相官邸への権力集中だ。前年の13年、解釈変更に反対していた内閣法制局の山本長官を辞めさせ、「行使容認」派の小松一郎にすげ替えた。安倍氏はこうした強権的な人事によって官僚を意のままにし、行政を私物化してきたのだ。
その結果起きたのが森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんであり、近畿財務局職員赤木俊夫さんの自死である。一見すれば一連の権力犯罪の張本人が安倍氏とその取り巻きであることは明らかだ。にもかかわらずこうした犯罪者たちが野放しになっているのが現状だ。
特定の人物への権力集中、法律や民主主義的手続きの無視。これを権威主義国家と呼ぶ。ロシアや中国がそうだが、第2次安倍政権の8年間とは、まさに日本の権威主義国家への転落の8年間であった。安倍氏の「国葬」は、日本の民主主義を葬り去ることだ。(恭)