関西電力美浜原子力発電所 中央の建屋が3号機(関電のHPより)

 7月4日、美浜3号機差し止め仮処分の第5回審尋が大阪地裁であった。中央公会堂で行われた審尋後の記者会見と報告集会には、今回で終結とあって約100人が参加した。債権者(申し立て側)代理人の井戸謙一弁護士から審尋内容の報告があった。
 前回5月23日の第4回審尋のときから今日までの間に2つの大きな出来事があった。
 一つは、関電が今年10月中旬に計画していた運転再開を2カ月程度早め、8月12日にすると6月10日に発表したこと。5月23日の審尋の時には分かっていたはずだが、関電側の代理人は何も言わなかった。
 もう一つは、6月8日に原子力規制委員会が基準地震動ガイドを改訂したこと。関電側の主張書面を7月末までにとしたのは、再稼働時期が10月20日であったからで、その前提が崩れたことから7月末まで待つ必要はない。基準地震動ガイドの改訂も思いのほか早かったので、関電側は第5回期日までに書面を提出できる。だから、8月の再稼働前に決定を出すよう6月20日に裁判所に要請したことが報告された。しかし、裁判所は再稼働前の決定は無理で、できるだけ早く決定を出すとした。
 井戸弁護士は、基準地震動ガイド改訂は不合理であると批判した。基準地震動ガイドの目的が、「基準地震動の妥当性を厳格に確認するために活用する」から「基準地震動の妥当性を厳格に確認するための方法を示した手引」になった。これによって基準地震動ガイドは基準地震動の審査に合格させるための方法の一つになってしまい、原発事業者が他の方法で地震動を策定しても、これを受け入れなくてはならなくなる。
 また、「ばらつき条項」を含む条文がすべて削除され、地震動の策定に経験式が使用されている場合は、何の考慮もいらないとされた。改訂前に認められていた「ばらつき」を考慮しない基準地震動ガイド改訂は不合理である。
審尋は終結したが、このまま8月の再稼働を指をくわえてみていることはできない。美浜3号機は、21年6月に再稼働したとき、わずか3カ月の間に2度もトラブルを起こしている。大きな事故が起こる前に止めなければならない。