コロナ禍と3%を上回る物価上昇に、労働者・生活者は苦しんでいる。最低賃金の全国平均の1・1倍以下で働く人の割合は、2020年に14・2%、10年前の2倍となった。6759万人(就労人口)×14・2%=約960万人。1千万人が年収200万円未満のワーキングプア層、最低賃金ギリギリに貼り付いている。
 国連の社会権規約委員会は13年、日本の最賃は「最低生存水準を下回っている」と勧告した。日本の最低賃金はOECDでも最下位クラスだ。「ただちに最賃1500円(時間)に!」という要求は切実、喫緊の課題であるが、各地方とも追いついていない。
 関西合同労働組合は7月4日、兵庫県最低賃金審議会に意見書を提出し、29日に同審議会に委員長と副委員長が意見を陳述。意見書は、㈰東京の1041円でも年収218万円弱。「結婚ライン」の年収300万円に遠く届かない。㈪都市と地方での生計費にほとんど差がない。221円の差は年収に46万円の格差を生み不当である(世界水準「全国一律最低賃金」を要求!)、㈫米ではシアトルをはじめ17都市で15ドル以上を実現した。ドイツでも今年10月から1541円(上げ幅22%)。世界で最賃1500円へ引き上げが主流になりつつある。㈬非正規雇用労働者を酷使し中小零細を収奪し、得られた466兆円もの内部留保(企業内貯金)に課税し、中小零細企業に支援を行なえば、1500円は充分可能である、と訴えた。
 陳述では佐々木伸良・委員長が、兵庫県の昨年最賃議事録の「失業増大の懸念」「企業の支払い能力」が労働者の生活より優先されるかのような議論を批判した。466兆円の内部留保も軍事費2%5兆円の増額も、「働く者の血と汗の結晶であり、国民の税金である。何よりも賃金の底上げに使うべきだ」と強調した。
 石田勝啓・副委員長は、「国連の勧告は13年だが構造はそのままだ。最賃引き上げが雇用悪化という定説は覆されている。日本経済の二重構造のもと、最賃引き上げには中小零細の援助が必要だ」と訴えた。
 陳述の際だけ会場に入室とされ、審議会議論の傍聴はできず、議事録が公開されるまでには2、3カ月待たなければならない。全労連、兵庫ユニオンなどからも意見陳述があった。
8月1日、中央最賃審議会のまとめは、全国加重平均31円(3・3%)を引き上げ、961円とする目安にとどまった。