7月21日、住民投票をもとめる署名21万筆を集めた「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」が大阪府に対して住民投票条例直接請求を行いました。
 請求を受けて7月29日、臨時府議会が開かれました。当日は朝から座り込みが行われ、参加者は入れ替わり立ち代わりマイクを握り府庁に向かってアピールしました。
 午後1時から議会が開かれ、吉村知事が「大阪府、大阪市はIR整備法に基づき必要な手続きを実施してきました。地方自治制度の根幹は代表民主制であり、住民の意思の反映については住民の選挙を通じて選ばれた長や議会が中心的な役割をはたすこととなっており、選挙で選ばれた議会での十分な議論を経て議決をされて」いるので「住民投票実施には意義を見出しがたい」という意見を付けて住民投票条例案を提案しました。要は選挙で選ばれた人間が決めたことに口出しするなということです。
 議会では6人の請求代表者が意見陳述しました。もとめる会事務局長山川義保さんは、たった1日で採決するという大阪府議会のやり方に抗議。「横浜市は委員会で意見陳述が行われ、そのあと各会派の審議が5時間以上続いた。和歌山は陳述に60分を確保した。いずれも常任委員会に付託されて委員会審議を経て、後日、本会議で採決された。大阪府議会はなぜできないのか。だから私たちは住民投票をやらなければいけなくなったのだ」と。
 豊中市の井上真理子さんは、豊中市議会、富田林市議会、熊取町議会で住民投票条例制定を求める意見書が可決されたことにふれ、地方選挙では政策が問われるが、住民投票では特定の事項に関して是非が問われると、「選挙で選ばれた議員が決めたのだから」という吉村知事の言い分はおかしいと反論しました。
 
ギャンブル依存症
 
 四条畷市の山本啓一郎さんは、カジノが生みだすギャンブル依存症が子どもたちの未来を奪ってしまうということを訴えました(別掲)。
 高石市の山口美和子さんはギャンブル依存症の父と弟のために人生を犠牲にした被害者家族の一人としてギャンブルの怖さを語りました。「行政が本来の役割を忘れ、カジノを誘致するということは、個々の府民の歩む人生の先々に落とし穴を仕掛けて回っているのと同じことです」。
 高松昌子さんは「住民投票を実現できる、その一心で取り組んできたこの21万筆の重みを、府民の思いをしっかりうけとめてください」。
維新・公明の反対討論、自民党の条件付き賛成討論を経て休憩に入り、3時間後に再開された議場で住民投票条例案はあっさり否決されました。そして、議場に残って抗議を続ける傍聴者に対して、維新議員はゲラゲラ笑いながら「はよ、出て行け」と言ったのです。こんな議員がのさばっていては私たち大阪市民・府民に明日はありません。いつまでも議員をしていられると思うなよ。この怒りをバネに、国に大阪IRカジノを認可させない運動、維新の議席を減らす運動をやり遂げるぞと胸に誓いました。      (池内潤子)

子どもを不幸にして経済再建を望みますか
四條畷市 山本啓一郎さん

 私は四条畷市で子ども食堂を運営しています。
 カジノは必ずギャンブル依存症の人を生み出します。それによって生活が激変し、夢をあきらめ、暗い青春を送らなければならない子どもたちをたくさん作ってしまいます。
 「依存症対策やりますから大丈夫です」。こんな言葉ほど無責任なものはありません。
 例えばAさんは、最初、得意先に連れられて、カジノに行きました。ちょっと儲けました。それからカジノにはまりました。貯金はなくなり、こどもの学資保険は解約し、親戚・知人からお金を借りる。とうとうカードローンも限度いっぱいまで。とどのつまり、会社の金に手を出して、手が後ろに回った。会社はクビになる。
 さて、このAさんにどの時点で依存症対策の手が及ぶのでしょうか。貯金が無くなった時ですか。親戚から金を借りた時ですか。違います。最後の最後に、手が後ろに回ってから、「こんなことをする人はカジノ依存症やな」と言ってやっと行政が手をつけるのです。
 そのときAさんの子どもはどうなっていますか。豊かな学園生活を送っていますか。そんなはずないでしょう。
 「目に見えない貧困」。多くの人たちがこれと闘っている。子どもたちのお腹を満たすことはできても、子どもたちが失った夢を満たすことは、できないのです。
行きたかった学校にも行けなくなります。お父さんが給料日にお金を持って帰ってこない。こんな現実がパッと出てくるわけです。私の父親もそうでした。どんな嘘でもつくんですよ。こんなに脳の中を変えてしまうギャンブル依存症に薬はありません。防げないのです。子どもの不幸の上に成り立つ経済再建。こんなことを望んでいるんですか。