2021年11月21日から30日にかけて日本周辺で実施された日米共同演習(海自のホームページより)

今、日本では、台湾有事を念頭において、琉球弧の自衛隊基地を中心に米軍と自衛隊の合同訓練が行なわれており、そうした訓練の基本ともなる作戦計画の制定を目指した準備が行われているようです。琉球弧要塞化の急ピッチは、この作戦計画と連動するものです。
この点の危険性を警告した論稿があります(石井暁「台湾有事と日米共同作戦」雑誌『世界』22年3月号)。その冒頭に「米軍が、『台湾有事の日米共同作戦計画を早期に策定するべきだ』と自衛隊に強い圧力をかけてきている。その原案には南西諸島に米軍の攻撃用軍事拠点を置くことも含まれている、と自衛隊幹部から打ち明けられた」などと衝撃的な事実が暴露されています。
「台湾有事が日本有事になってはいけない」とする私たちにとって、このような作戦計画はまったく不必要かつ無駄なものです。それどころか、このような作戦計画があり、それにそって訓練していること自体、中国からの先制攻撃を受けかねない挑発行動ともなる危険なものと考えます。
こうした計画の作成や訓練が、国会等に報告されず、着々とほぼ秘密裏に進められています。恐ろしいことです。
 
国会の権限は大きい
 
戦前の軍隊は天皇の統帥権のもとにあり、議会がそのあり方を議論することは統帥権を侵害するものであって決して許されませんでした。しかし、現在の憲法は、このような制約はありません。自衛隊の訓練行動を含むすべての行政は国会の管理監督のもとに行なわれることになっているのです。
国会は、こうした共同訓練の内容を明らかにさせ、さらには共同作戦計画作成の現状を報告させ、これら違法ないし危険な動きをやめさせることが緊急に必要です。
2月の新聞に、共産党には新安保法の廃止を野党共闘の共通課題としたいとの意見があり、立憲民主党内には異論があるとの記事が載っていました。廃止という狙いは、司法的決着をつけるにはふさわしいものですが、国会での議論とどうつながるのか、つなげるつもりか、今のところ私にはわかりません。あるいは、今、全国各地で新安保法違憲訴訟が提起されていますから、その新安保法が有効であることを前提として国会でその適用をめぐる議論をすることは相応しくない、との考えもあるのかもしれません。
どういう形で議論するかはともかくとして、立憲民主党、共産党など野党は、集団的自衛権行使について厳格な要件を課した公明党、さらには自民党内のハト派とも危機意識を分かち合いながら、日本を台湾有事の戦争に巻き込ませないための国会論議をぜひとも提起し討議を重ねてほしい。これは平和を願う国民の切なる思いです。
市民の運動も、「台湾有事は日本の有事」が戦争への危険な流れであることを認識し、戦争を避けるための議論の輪を広げ深め、その声を国会に届けるべく奮起しなければならない、そのように考えています。(ブログ「隠居老人の日中不戦祈願」参照/見出し、小見出しは本紙) 
      (おわり)