アンドレイ・クルコフ『灰色のミツバチ』

あれ、そう言えば、日本にもマスコミに対する圧力があった。政権批判をするテレビ、例えばテレビ朝日「報道ステーション」で古舘伊知郎氏が降板(15年4月)したことや、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子氏が降板させられたこと(16年1月の報道) などが話題になっていたのだが…。
この社会の変化にロシアの文学者たちは反応していた。ミハイル・シーシキン。どこかで聞いた詩人だが、当時の彼は、連日流されるニュース番組がプロパガンダ的視点であり、愛国心を煽るものであるという点などを批判していた、とのこと。
NHKは大丈夫かな? 久米宏がNHKは民放であるべきだと言っていたが…。
前号紹介の著者・奈倉有里氏は、09年に他界したワシーリー・アクショーノフのクリミヤ「半島」でなく、多民族の融合を考えさせる『クリミヤ島』。2018年に発表された、白か黒かをはっきり分け灰色の存在を許さないアンドレイ・クルコフの『灰色のミツバチ』などなど、暗闇の社会を乗り越えるのに必要とする数だけの「夜明けの言葉、文学」と出会っていた。
読書中の7月8日に、安倍元総理が凶弾に倒れたとのニュースを聞いた。こんなことで政界から去って欲しくなかった。選挙で負けて退陣してほしかった。「もり、かけ、桜」の疑惑に答えて欲しかった。しかし、事態は逆になった。大変な功績があったから、国葬にするという。
逆でしょう。例えば、13年の特定秘密保護法、15年の安保法制、21年の自衛隊基地の周りや国境離島などの土地利用を規制する重要土地等調査法などが功績なのでしょうか。
 
朝日川柳が「炎上」
 
私と同じ思いのある人がいたとみえ、16日の「朝日川柳」に作品を寄せた。その作品について元総理に同情、悼む作品がなく、すべて「揶揄」するものとネットで騒がれた。私も購読者だが、「統一教会」とのつながりなど知りたいことがたくさんあり、その日の「朝日川柳」は見ていない。朝日新聞をチェックする人物がいたのだろうか、政権側のウオッチャーが火付け役だったのか。ネット上などで大騒ぎになった。川柳の本質は権威を、常識を笑い飛ばす批判精神である。だから、川柳自体に元総理の追悼を期待してはならない。
作品を2、3挙げてみよう。

疑惑あった人が国葬そんな国
死してなお税金使う野辺送り
忖度はどこまで続くあの世まで

個人を誹謗したものではなく、表現作品である。それに対する批判はほっとけばよいものを、朝日新聞は謝った。批判を許さない「全体主義」的社会に近づいているではないか。いろいろ挙げてみると、日本の社会も夕暮れに近い。これから何度か夜が訪れるだろうが、その夜に堪え切れる夜明けの歌を私たちも探しておかなければ。
7月31日の琉球新報による。日本世論調査会の調査では、今後戦争の可能性が「ある」と答えた人が48%であった。
     (富樫 守)