
8月14日、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動が主催するオンライン集会が開催された。金学順さんが被害者として名乗り出たのが、1991年8月14日だった。2012年に台湾で開催されたアジア連帯会議で、8月14日を日本軍「慰安婦」メモリアル・デーとすることが決まり、翌13年から毎年この日に様々な取り組みが行われている。
日本軍「慰安婦」問題の解決がなされない社会は、その問題と地続きで、今も性暴力、性搾取がはびこり、被害が続いている。10回目の今回はそのリアルな現状が報告された。また、すでに亡くなった被害者たちが、自らの被害を乗り越え、平和人権活動家として最期まで行動されたことを記憶し、継承することを通じて私たちに何ができるのか考えようと訴えられた。
プログラムの最初で各国のサバイバーの訴えの記録映像が流された。サバイバーたちは異口同音に、公式謝罪を拒否する日本政府への怒りや、カネではなく踏みにじられた尊厳の回復を求めていることを訴えていた。
映像の最後に、金福童さん(19年1月死去)が静かに話している姿が映し出される。「希望をつかみ取って生きよう。私は希望をつかみ取って生きている。私の後についておいで。みんなで希望を忘れずに、希望をつかみ取って生きましょう」。それは闘いを受け継ぐべき私たちや次の若い世代への激励のメッセージであった。
今も続く性搾取
今回のメイン企画は、一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃さんによる「今も続く性搾取」という講演。Colaboは、2010年から、主に10代の女性を支援する活動をしている(https://colabo-official.net/)。
どこにも居場所がなく、夜通し街で過ごさざるを得ないような女性たちと直接つながり、支えることが活動の中心。困難を抱える女性たちが様々な暴力や搾取に行き着かなくてもすむようにこの社会を変えることを目指している。
仁藤さんは、金福童さんのメッセージを韓国で直接聞き、固い握手を交わしたことが強く印象に残っているという。そういう仁藤さんも、活動を始めた頃は、「慰安婦」問題との関連を意識していたわけではなかった。
2014年、仁藤さんは少女たちを性搾取する加害者の手口や買春者の実態をまとめた『女子高生の裏社会』(光文社新書)を出版。翌年、外国人記者クラブでそうした実態を告発した。そのことに対して、「仁藤は『慰安婦』」「仁藤は朝鮮人」「日本を陥れようとしている」などの差別攻撃を受けるようになる。
当初はなぜこんな攻撃を受けるのか分からず恐怖も感じた。しかし、「慰安婦」問題を学んでいくうちに、現代の少女たちへの性搾取を無きものにしたい人たちと、「慰安婦」問題を無かったことにしたい人たちが重なっていることに気がついた。
本当の解決が必要だ
現代の性搾取も「慰安婦」問題もつながっているのだ。日本では、戦前も今もずっと同じ手口を使って女性を、少女を、物のように扱ってきた。「ちょっとしたカフェのようなところだから」、「住むところもあるし、ちゃんと生活できるところ」などと少女を騙して性搾取し、性売買をあっせんする者が今もいる。少女だけではない、大人、高齢の女性も含めて、あからさまな脅迫がなくても当たり前のように性が商品化される。
「慰安婦」問題の本当の解決は、事実を認めて謝罪することであり、繰り返さないための教育であり、なかったことにしないことである。これがなければ、社会の現状を変えることはできない。「だから『慰安婦』問題に取り組む人たちとも連帯していきたい」と仁藤さんは語った。(つづく)