東京高裁前で抗議のシュプレヒコールをあげる三里塚反対同盟と支援者ら=2日、東京都千代田区

新やぐら裁判で不当判決

市東さんの農地を取り上げる農地法裁判・請求異議裁判の終結(昨年6月)から1年余、法的にはいつ強制収用が強行されてもおかしくない状況が続いている。
9月2日には東京高裁が、市東さんの天神峰農地に建つ反対同盟のやぐらと看板の撤去を求めた空港会社(NAA)の訴えを認める不当判決を出した。東京高裁は、用地買収の不法・不正を明らかにする旧公団用地部職員の証人採用を拒否し、NAAによる不法・不当な買収・明け渡しを認めた。
また一審判決にはなかった強制収用の仮執行を付けた。反対同盟と弁護団は直ちに上告手続きと仮執行宣言の停止の手続きに入った。市東さんの農地にたいする強制収用の法的なハードルが下げられたことで、情勢は緊迫している。

強権的な訴訟指揮

市東さんの農地をめぐるもう一つの裁判、耕作権裁判も転換点を迎えようとしている。これは、市東さんの耕作地の一部を「不法耕作地」として、NAAが取り上げようとしている裁判だ。8月22日に開かれた口頭弁論で、千葉地裁・本田裁判長は、「裁判開始から15年」「弁論は46回重ねてきた」として、「論点整理」を終わらせ、証拠・証人調べに入ろうとしている。
裁判が長期化しているのは、立証責任があるNAAが裁判所の文書提出命令や、証拠提出・証人採用を拒否しているためだ。提出されている唯一の証拠である「測量図」などは偽造文書であることが明らかになっている。
ところが裁判所は「文書提出命令」を除いてはNAAに何ひとつ指示することなく、沈黙を決め込むNAAを擁護しているのだ。証拠も証人も出さないのでは裁判にもならない。それでも裁判所は強権的に審理を進めようとしている。
10月30日の進行協議をはさんで次回裁判は11月28日(月)。千葉地裁の強権的訴訟指揮を喰いとめねばならない。

地域と地球環境の破壊

9月4日、反対同盟は今秋開始予定の機能強化計画の工事実施(B滑走路北再延伸工事)にたいし、現地闘争を行った。
コロナ化で航空バブルがはじけ、成田空港は破綻の危機に直面している。ところがNAAは「中長期計画は別」とばかりに、再度の「航空・観光バブル」を追いかけている。その姿には哀れささえ感じる。成田空港の赤字は一昨年(714億円)、昨年(524億円)に続いて本年度も330億円となることが明らか。「航空復活の元年」(NAA)は夢のまた夢だ。空港拡張による成田の巨大化は無用の長物である。
機能強化計画の実施に際し、反対同盟は工事差し止めの裁判を千葉地裁に起こした。芝山町・多古町住民を中心とした騒音差し止めの訴訟準備と連携しながら、法廷でも機能強化計画とのたたかいが始まった。
反対同盟は「地球環境破壊と気象変動をもたらす、すべての空港拡張計画の白紙撤回を求めます」と署名活動を呼びかけている。空港周辺地域住民のたたかいとともに、様々な視点から空港機能強化計画の白紙撤回を求めるたたかいが広がっている。
10月9日(日)正午、成田市赤坂公園で、市東さんの農地を守り機能強化計画撤回を求める全国集会に参加しよう。