9月25日、神戸市で開かれた講演会で関西大教授の高作正博さんが参院選、安倍銃撃事件、その後の世論、民主主義をめぐる問題などについて話した。(要約/竹田)

誰が民主主義を壊したのか

参院選では自公、維新、国民の「改憲4党」が改選125のうち93議席を獲得し、3分の2超となった。自民は単独過半数。非改選も合わせ「改憲勢力」は177議席(3分の2=166)を占める。しかし、一挙に改憲にとはいかない状況だ。
安倍銃撃事件の直後からの岸田政権は「民主主義の破壊」「民主主義の根幹たる選挙中の卑劣な蛮行」と表明していたが違和感を否めない。民主主義を破壊してきたのは誰だったのか。
数々の公文書改ざん、隠蔽、破棄。「ていねいに説明」といいながら一切答えない国会無視。そして暴露された旧統一教会との癒着。それはジェンダー・フリー敵視、家族制度や、緊急事態条項、自衛隊明記など自民改憲案にも及んでいた。
9月、沖縄県知事選では玉城デニー知事が、辺野古推進をかかげた佐喜真候補を6万票余の差をつけ再選した。辺野古の埋め立て強行、振興予算削減という鞭と圧力への反発もあったが、投票率57・9%という低さが気になる。政府は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返すが本当か。完成予定の滑走路は短いため、13年4月の日米合意では、「普天間代替で確保されない長い滑走路による活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」が返還条件に入っている。これをクリアしなければ辺野古が完成しても普天間返還はない。
「民主主義の自壊」は、人びとが共通の「空間」を喪失したことで進行してきた。これ対して「連帯の再構築」が必要だ。ポピュリズムの台頭は共通の「事実、真実」の喪失でもある。何が事実で、何が真実か。そこを曖昧にしてはならない。