
岸田政権が強行した安倍元首相の国葬への参列者は4183人にとどまり、政府が目論んだ6000人を大幅に下回った。岸田は「弔問外交」の実施を重要な意義にあげたが、先進国主要7カ国(G7)で参列した首脳はゼロで、その思惑は見事に破産した。
「国葬」にかんする事前の報道各社の世論調査では60~70%が反対しており、事後の調査でも60%近くが「良くなかった」と回答した。同時に岸田内閣の不支持率が、50%を超えた。こうして安倍国葬は大方の予想どおり失敗に終った。
問題は岸田政権にこの失敗を真摯に反省しようという姿勢が見られないことだ。3日に始まった臨時国会の所信表明演説で岸田は「統一教会との関係」については、「(国民の)信頼回復」と言うにとどまったが、そうではないだろう。政権与党との癒着を暴き出し、安倍氏が深くかかわっていた統一教会の政治への影響力を一掃するために政府が先頭に立つと表明すべきである。それをせずに「信頼回復」があると思っているのか。また演説では「円安・物価高」への言及があったが、円安を促進してきたのは、第2次安倍政権が実施した「異次元の金融緩和」である。そこで市場に供給されたばく大な資金によって株価は大幅に引き上げられたが、労働者の実質賃金は低下する一方だった。低賃金の主要な原因は自民党政権が20年来進めてきた、非正規雇用化だ。必要なのは、株価・株主重視の経済・労働政策から抜本的に転換することだ。
今年の年末には米国の求めに応じて改定する「安保3文書」(国家安保戦略、防衛大綱、中期防)で、政府は「軍事費対GNP比2%」や敵国への先制攻撃を可能にする「反撃能力の保有」を決定しようとしている。「敵国」とは中国を想定している。「安保3文書改定」は東アジアの緊張を高めるだけで、その平和に寄与するところは皆無だ。所信表明の冒頭で岸田は、日本が直面する状況を「国難」と表現したが、本当に憂慮すべき「国難」とは、当人が死んでもなお「アベ政治」を続けている自民党が政権に居座っていることだ。