
10月7日、フェミ科研費裁判の控訴審第1回公判が大阪高裁で開かれた。控訴審に先立ち9月18日、裁判支援の会は谷口真由美さん(法学者)のオンライン講演会を開催。谷口さんは、メディアにも積極的に登場、忖度のまん延する社会に歯に衣着せぬ論客として活躍。ラグビー協会理事でもあったが、かの森喜朗の「わきまえぬ女」発言に象徴される「おっさん社会」でいやというほどいじめ抜かれた体験を交えながら、この裁判の重要性を訴えた。
「学問の世界にはお作法というものがあって、他者の研究を『批判』するときには、相応の論拠が必要。科研費というのは申請してから、他の何人もの研究者が審査し、その研究に意義が見いだされて採択されるもの。審査員である研究者は自分の主義主張ではなく、科学的な研究として成り立つかどうかという点で判断する。杉田水脈は自分の一連の政治的なパフォーマンスで何一つ論拠も示さず原告達の研究を罵倒した。原告の理を尽くした訴えに一切答えずに棄却した京都地裁の判断は、学問の世界すべてへの攻撃ともいえる」と指摘。「荒野を切り拓くようにたたかってこられた先輩諸姉に心から敬意を送り、裁判勝利のためともにがんばる」
原告の伊田久美子さん(大阪府大学名誉教授)は、「100年の歴史がある科研費にジェンダー項目が入ったのは2000年代になってから。女たちがやっている研究は研究ではないと言われ続け、『おっさんの壁』に苦しめられた。司法は場外からの監視が必要」と訴えた。上瀧浩子弁護士は、「歴史修正主義の目指すものは改ざん、つまりあったことをなかったことにすることにある。『慰安婦』問題はなかったことにしたいから、その研究などあってはならないということになる」と語り、「2審で真っ向からたたかう。大阪高裁大法廷にあふれる傍聴支援を」と呼びかけた。このオンライン集会に全国から500人もの申し込みがあったそうだ。(蕗子)
【フェミ科研費裁判】 「国会議員の科研費介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判」。2014年度から17年度かけて日本学術振興会の科学研究費助成を受けた、7人の研究者による「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」の共同研究にたいして、杉田水脈衆議院議員(自民党)が、「研究はねつ造である」「研究費に不正使用がある」などとSNSなどで誹謗中傷したことにたいして名誉毀損で提訴した損害賠償請求事件。原告は牟田和恵大阪大学教授、岡野八代同志社大学教授、伊田久美子大阪府立大学教授、古久保さくら大阪市立大学准教授(肩書きは当時)。
杉田は18年から、「反日学者に科研費を与えるな」とインターネットテレビやSNSなどでくり返し、国会質問でも取り上げていた。原告の牟田氏には「学問の自由は尊重します。が、ねつ造はダメです。慰安婦問題は女性の人権ではありません。国益に反する研究は自費でお願いいたします。我々の税金を反日活動に使われることに納得いかない」と誹謗中傷していた。一審の京都地裁(長谷部幸弥裁判長)は今年5月25日、原告の請求をすべて棄却した。