
ロシアの大統領報道官は18日、ウクラナ東部4州が「ロシア領として統合されつつある」とし、4州に核兵器の脅威で領土を守る「核の傘」が適用されると述べた。
ロシア軍の占領下で行われた東部4州の「住民投票」には合法性も正当性もない。しかし、ロシアが併合を強行したことによって核戦争危機のレベルは数段上がっている。
ロシアは核兵器を使用する条件として、(一)ロシアまたはその同盟国に対する弾道ミサイルによる攻撃、(二)ロシアまたはその同盟国に対する核兵器またはその他の大量破壊兵器による攻撃、(三)ロシアの核兵器の指揮統制システムを脅かす行動、(四)ロシア連邦が通常兵器で攻撃され、国家の存立そのものが脅かされる場合の4つのケースをあげている。
18日の「核の傘」発言は、ウクライナ軍による東部4州への攻撃がロシアの核使用条件の(四)に該当することを改めて明示し、西側諸国へのけん制を行ったとみられる。当然、「核のどう喝に屈して軍事侵略を認めてよいのか」という議論はあるだろう。その上でなお、今最優先すべきことはロシアの核兵器使用を端緒とする核戦争を未然に防止することである。そのためにはウクライナ東部における大規模な軍事衝突を回避する以外にない。こうした目的を達成するために最も有効で確実な方法はロシアとの停戦交渉に直ちに入ることだ。
通常兵器でも多くの人命が奪われているが、今日の核兵器は小型といわれるものでも、広島や長崎に投下された原爆をはるかに上回る威力を有している。停戦交渉は、まかり間違えば人類の存亡すら危うくする愚挙を思い止まらせるためであって、「どう喝に屈した」ことにはならない。
広島市では19日と20日、核廃絶をめざす世界8000超える自治体でつくる平和首長会議の総会が開れ27カ国142都市が参加した。ロシアからボルゴグラードがオンラインで参加した。会議では14歳で被爆した梶本淑子さんが核廃絶を訴えた。いま必要なのは、国境を越えた「核戦争反対」の人びとの行動である。