
10月7日、大阪高裁でフェミ科研費裁判の控訴審第1回弁論が開かれた。87席の大法廷は満杯、9割が女性の傍聴者。入ってきた3人の裁判官は年配の男性ばかり。一瞬不吉な予感が。(「おっさん」不信が強すぎ?)。
裁判長が、開廷後すぐに「『事実関係』での争いはありませんね。原告の上告趣意書と被告側からの『反論』が出ているので、あとは評価の問題なのでこれで終了として…」という。「えっ、結審?」、傍聴席に緊張が走る。すかさず弁護団から、被告側の「反論」には多くの問題があり、それへの意見を出す必要がある。ほかにも追加意見書も出ていると述べると、裁判長は「ではあとで進行協議を」と、原告の牟田和恵さん(阪大名誉教授)の意見陳述に移った。
裁かれるべきは杉田
牟田さんは、一審の判決文が杉田水脈という「影響力の大きい国会議員」と市井の研究者とが対等な私人同士であるかのように決めつけ、杉田の非を問わないことを前提に書かれている。研究者にとってねつ造とか研究費の不正使用などという非難は存在そのものを否定されること。本法廷で裁かれるべきは杉田であると、一語一語に力を込めながら述べた(牟田さんの原判決批判はHPに掲載)。公判はこれで終わり、別室での「進行協議」が行われた。
報告会会場に移動した支援者およそ100人のもとへ3人の女性弁護士、4人の原告が到着。まず「次回公判期日は2月2日」と即日結審は阻止できたことが報告された。弁護団、原告のみなさんの発言からは、一審京都地裁判決への怒りと悔しさ、そこから立ち上がった熱い思いと意思の強さとが伝わった。ジェンダー問題の研究や運動は、無視や嘲笑を受けながら女性研究者や若い学生達の自主的なゼミ活動などで育ってきた。その苦闘を無にせず、次世代のためにもこの裁判に勝ちたいという。
次回公判での結審もありえる。支援の会からは、「サポーターを集めよう、裁判所へはがきを出そう、署名運動(現在準備中)を進めよう、次回公判には2倍、3倍の結集を」と提案があった。
若い弁護士さんが「裁判所が終了といったとき、傍聴席にこれほど多くの人がいなかったらどうなっていただろうか。皆さん、来てくださってありがとう」と言われたが、それを聞いて、私も力になれたんだと素直にうれしかった。「一点の曇りもない判決を求める(牟田さんの意見陳述の最後の言葉)」ために力を尽くしたい。
(蕗子)
資料など詳しくはフェミ科研費裁判支援の会 kaken.fem.jp で。