
「憲法改正は最終的には国民の判断が必要。発議に向け、国会の場で積極的な議論が行われるよう期待する」と岸田首相は臨時国会の所信表明演説(10月3日)で述べただ。参院代表質問では石垣のりこ議員(立憲)が、「国会を形骸化させ、憲法を守らない政権が改憲を促してはならない。国葬や旧統一教会問題などに違憲の事例はないか審査会で糾すべき」と、岸田首相を批判した。
10月27日、衆院憲法審が討議に入った。野党側が「旧統一教会問題、国葬の検証」などの議論を求め、「教団の主張と自民改憲4項目が類似している。改憲を旧統一教会が下支えしてきた」「今国会では宗教と憲法関係を議論する」と意見を述べたが、自公は「緊急事態条項の新設」をとり上げた。憲法審を改憲4党による「改憲案審査」にしてはならない。
憲法研究者の飯島滋明さん(名古屋学院大)は、「自民改憲案に旧統一教会の影響がある。選挙で支援を受けてきた自民党の改憲草案は論外だ」と批判している。「コロナ禍を機に(緊急事態条項への)関心が高まった」(菅前首相)というが、危機を利用する発言だ。
自身も阪神・淡路大震災で被災した永井幸寿さん(弁護士)は、「災害対策の原則は、準備していないことはできないということ。感染症対策も同じで、緊急事態条項で政府に権力を集中すれば何とかなると考えるのは幻想。むしろ、権力の分立を一時やめることの危うさを考えるべき」と述べる。
自民党は、7月参院選の公約に「2%も念頭に必要な防衛費を積み上げ、5年以内に抜本強化をめざす」とした。「長距離ミサイルなど敵基地攻撃(反撃)能力の保有」も表明した。22年度の防衛費は5兆4000億円(GDP比0・96%)。2%では10兆円となり、米、中につぐ世界第3位となる(現在9位)。くらしや福祉を切り捨て、「軍事大国」への道を進もうというのか。