
政府は、「軍事費の対GDP2%への引き上げ」と敵国への先制攻撃を可能にする「反撃能力の保有」を柱とする安保関連3文書の改定を現在開会されている臨時国会中におこなおうとしている。改定の内容は実戦レベルで日米の軍事的一体化の完成をめざすものであり、「戦争をしない国」から「戦争ができる国」への大転換である。この重大事案を12月10日には会期末を迎える臨時国会で通そうというのか。
3文書とは「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」のことだ。自民党は今年4月26日に岸田首相に提出した「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」のなかで、3文書の改定を「米国の戦略文書体系との整合性」を踏まえておこなうものと明言している。自民党は、「日本を国家丸ごと米国の国家戦略の中に組み入れよ」と政府に進言した。
2%に引き上げれば、日本は軍事費で米中に次ぐ世界第3位の軍事大国となる。それが周辺諸国の及ぼす悪影響は計り知れない。また「反撃能力」とは「敵基地攻撃能力」の単なる言い換えではない。「提言」では、「反撃能力の対象範囲は、相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含む」となっている。「指揮統制機能等」とは、日本で例えれば首相官邸や防衛省にあたる。中国ならば中国共産党の中枢、北京の「中南海」へのミサイル攻撃を意味する。それが日本に住む人びとにどのような結果をもたらすのか。ロシアがウクライナに対して行っていることを見れば明らかだ。反撃能力の行使で戦場になるのは南西諸島をはじめとする日本列島全体だ。一体誰のためにそのような戦争をやろうというのか。 (深田京二)