岸田政権は「40年廃炉、検査に合格すれば1度だけ20年延長可能」とするルールをなくそうとしている。安倍元首相でさえ実現できなかったこの暴挙に、原子力規制委員会(以下、規制委)も追随しているのだ。
 規制委は11月2日の定例会で、「原則40年、最長60年」とする原発の運転期間のルールを、60年を超えた原発でも10年以内ごとに設備の劣化状況を審査し、新規制基準に適合すれば運転を認める方針を示した。
 原発の運転開始から30年となる前に、設備の劣化状況の評価や管理手順などを定めた計画の策定を義務づけ、規制委が妥当性を審査。認可されれば運転できるとしている。その後も10年以内ごとに同様の審査をしていくというが、電力会社の意を汲む規制委にどれほどの審査ができるのか。このままでは期間制限なしの原発運転が可能になる恐れが大きい。
 そもそも「40年ルール」は福島第一原発の事故後に作られたものである。ところが岸田首相は、8月24日、「2050年の脱炭素社会の実現」を口実に、原子炉等規制法の規定(原則40年とし、例外的に規制委の審査を経て1回だけ20年延長できる)を見直す方針を明言した。そして規制委も10月5日、この方針を容認した。彼らは原発事故の教訓を忘れてしまったのか。
 規制委の根拠法である原子力規制委員会設置法は、福島事故の教訓を踏まえ[て、その第1条で「原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力」し「専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使」することで「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資する」と、この委員会設立の目的を定めている。規制委は法に則って本来の役割を果たすべきである。
 
休止期間は除外
 
 2011年の福島原発事故以来、多くの原発は10年程度休止している。また、定期検査中も運転していない。その間は原子炉が中性子にさらされてないので、40年の運転期間から除く方針が、経産省で検討されている。
 運転休止中でも配管やケーブル、ポンプ、弁など原発の各設備・部品は劣化する。定期検査で部品を全部交換できるわけではない。電力会社が行う点検の範囲も限定的だ。「40年超は廃炉」という規定をゆるがせにしてはならない。
     (池内潤子)