U.S. Air Force F-16 Fighting Falcons assigned to the 51st Fighter Wing joined with Indo-Pacific Command, B-1B Lancers, and South Korea F-35A Lightning IIs in a combined training flight during exercise Vigilant Storm 23 over the Korean Peninsula, Nov. 5, 2022. Vigilant Storm is a recurring, re-planned training exercise that demonstrates the bilateral nations’ interoperability and showcases deterrent capabilities. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Dwane R. Young) 朝鮮半島上空で行われた米韓合同演習に参加したB1B超音速戦略爆撃機、F35戦闘攻撃機など=11月4日、米空軍のウェブサイトより転載

 軍事衝突さえも懸念される南北朝鮮の状況について、在日韓国研究所代表の金光男さんが解説した。(11月6日、大阪市内で行われた講演を要約/本紙編集委員会)
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)がミサイル発射を繰り返す背景には2019年のハノイ朝米首脳会談の決裂がある。決裂の原因は、トランプ米大統領(当時)が朝米共同声明(18年)の履行にあたって、「まず北が核を放棄せよ」と迫ったことにある。会談の決裂で朝鮮は方針転換し、米・韓との対話を中止した。
 18年締結の「9・19南北軍事合意」では軍事衝突を避けるために海上に緩衝地帯を設けることを約束したが、朝鮮は11月3日、その緩衝地帯を越えて南側にミサイルを着弾させた。韓国も直ちに戦闘機からミサイル3発を朝鮮側に発射した。「南北軍事合意」が朝鮮、韓国双方によって破られた。
 11月3日、ワシントンで開かれた韓米安保協議会では韓国の国防省長官が「金正恩政権を終わらせる」と発言し、「金正恩政権を打倒する」と意思表示した。朝鮮半島危機は非常に深刻である。
 この間、韓米軍事演習が激化していることの影響は大きい。9月26日から29日にかけて、米空母「ドナルド・レーガン」などが参加する韓米海上合同演習が実施された。9月30日には自衛隊も参加して日本海で合同対潜水艦訓練が行われた。対して朝鮮は10月4日、日本上空を通過する弾道ミサイルを発射した。
 また韓・米合同空中演習「ヴィジラント・ストーム」が10月30日から11月5日まで行われた。韓国空軍と米空軍の戦闘機や空中給油機など240機が参加し、朝鮮攻撃を想定した訓練が行われた。これは空軍力で韓米に比べて格段に劣る朝鮮にとっては大きな脅威だ。
 韓国は朝鮮に対してミサイル発射の中止を要求するのであれば、韓米合同軍事演習を中止し、「9・19南北軍事合意」を遵守すると明言すべきだ。米国は朝米首脳会談決裂の原因を振り返り、朝鮮への経済制裁を部分緩和し、18年朝米共同声明の履行を具体化すべきである。日本は朝鮮戦争の停戦(臨戦態勢)継続か、恒久平和体制への転換か、いずれを望むのかを明らかにすべきだ。
対話によって朝鮮戦争を終結させることが平和の実現につながる。