扇状地は、山間部の険しい水の流れが、平野部に出たところで造られる自然の地形である。山地を流れる若い頃は奔流だった水の勢いも、時間の経過で荒々しさが削られる▼あるものは堆積物となり、山の栄養を平野部にもたらし、あるものは伏流水となって、清らかな水を里にもたらしている▼「扇状地」という言葉は、今の社会のある側面をあらわしている。ウクライナでは戦争がつづく。テレビの解説者の話ではロシアは敗北しそうだという。しかしこのテレビ解説者はいつも同じメンバーだ。新型コロナの時もいつも同じメンバーがテレビに出ていた。そしていつのまにか誰も新型コロナの解説をしなくなった▼地面を流れている表層の水は、全体の水量のわずかな一部であり、それだけで全体を語れない。扇状地の伏流水は、豊かに水を地下に蓄えている▼私たちは、表面ではみることのできない伏流水や地面の中の様子もしっかりと見ていくべきなのだ。そこに自然の真実があるのだから(秋)