政治家たちは統一協会に政治上の便宜も図ってきた。1992年、脱税で有罪判決を受けていたため日本への入国資格がなかった文鮮明を、法務大臣特別許可というかたちで超法規的措置で入国させたのは、当時の自民党副総裁・金丸信だった。
こうした自民党と統一協会の親密な関係によって、統一協会に対する追及には圧力がかけられた。それはメディアだけでなく警察にまで及んでいた。自民党の庇護によって統一協会の犯罪的な活動が野放しにされてきたのだ。
統一協会は「日韓トンネル」などの事業や、流通・金融、メディア、薬品・食品、医療、自動車などの企業を経営している。その利権に群がる政治家たちも大勢いるのだ。
アメリカでは「ワシントン・タイムズ」という保守系メディアを経営し、共和党とのパイプを確保している。ワシントン・タイムズの記者は、国務省や国防総省のスタッフなどとつながっている。そのコネを使って、統一協会がソウルで開催した「ワールドサミット2022」にトランプ前米大統領からビデオレターを獲得したと言われている。

「北の核は神の摂理に貢献」

統一協会は教義に絶対的に忠実であるようにみえるが、実は、権力と結びつくためならば、平気で教義の内容を変えてしまう。
彼らは「共産主義は神と対立するサタンの究極思想」という勝共思想で自民党とつながり、組織を拡大してきた。ところがソ連崩壊と東西冷戦の終結後は、「勝共だけでは政治的に弱い」と判断し、カリスマ性を維持するために1991年、文鮮明は朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を電撃訪問して金日成主席と会談した。文鮮明と金日成が抱き合い盃を交わす映像は、世界に衝撃を与えた。そこで文鮮明は「北朝鮮が保有する核は神の摂理に貢献している」と金日成にすり寄ったのだ。最近、開示されたペンタゴン(米国防総省)の報告書には、この会談の際に、文鮮明は朝鮮に4500億円という巨額の寄附を行っていたことが記載されている。
また94年には、統一協会が経営する日本国内の貿易会社がロシアから老朽潜水艦12隻を購入して、朝鮮に売却している。実戦には使い物にならない潜水艦だが、弾道ミサイルの発射技術研究を目的として購入したのでないかとロシアの高官が分析していた。
この取引は日本国内でも大きく報道されたが、それが統一協会がらみであることは報じられなかった。

日本経済で南北統一

こうした統一協会の動きは、朝鮮国内での事業展開を目的にしていたと考えられる。金儲けのためなら、従来の勝共の教義と真っ向から矛盾していても平気なのだ。それを、「冷戦の最後の遺物が朝鮮の南北分断である。天宙統一のためには南北統一が必要である。それを成し遂げられるのは神(=文鮮明)だけだ」という「論理」で合理化した。そして「日本経済でもって南北を統一する」「そうしなければ日本が滅びる」「日本人信者はどのような犠牲を払ってでも、一家を捨てても、一族が滅びても南北統一のために奮起せよ」(天聖経)と、日本からの献金を督促していたのである。(当間弓子)