左から原告の玉城毅さん、亀谷正子さん、金城実さん、松島泰勝さん=1日、大阪市

先住民族の権利を問う
戦前、京都大学の研究者らが百按司墓(沖縄県今帰仁村)から盗み出した遺骨の返還を求める裁判の控訴審が大阪高裁で開かれた。(12月1日)。
裁判の報告集会では原告の玉城穀さんが「国際法と国内法の双方から見ても一審判決が不当なのは明らか」と述べた。弁護団長の丹羽雅雄弁護士は、「過去の不正義に対してどう対処するのか。日本は世界の流れから遅れている。琉球民族には先住民族としての権利がある」と話した。
鑑定人の太田好信さん(文化人類学)は「植民地主義により壊されたものがある。遺骨はただの骨ではない。未来に向かって京都大学も、人類学会も変わって欲しい」、同じく鑑定人の上村英明さん(植民地論)は「先住民族の名誉復権は尊い。学知の脱植民地主義が問われている」と指摘。原告の金城実さん(彫刻家、沖縄県読谷村在住)と原告団長の松島泰勝さん(龍谷大学教授)の発言を紹介する。(高崎)

ヤマトは言葉も奪った
金城実さん(彫刻家)
水平社宣言を琉球語に訳している。沖縄とアイヌは言葉を弾圧された。それは人間の思考能力や人間性を縛ることだ。学校では方言札をぶら下げられ、差別し恥をかかせるところから子どもたちの心を支配していった。この裁判は沖縄文化への弾圧の歴史を糾す裁判だ。沖縄の言葉は「土人が使う恥ずかしいもの」と叩き込まれた子どもたちは、表現力を奪われ、萎縮させられてきた。沖縄にも問題はある。沖縄には糾弾権がない。部落解放運動から学ぶのは糾弾権である。沖縄は陳情、建白の運動しかしていない。水平社宣言から100周年。復帰50年。沖縄の解放と部落解放運動を、全国で差別され抑圧されている人たちと実践する。

5億人の先住民族と共に
松島泰勝さん(原告団長)
私も言葉を奪われた琉球民族。1879年に琉球併合、日本政府は何から始めたか。言葉を奪うことからだった。そして同化政策・皇民化教育。 日本の教科書で学ぶわけだから、私は日本人であると洗脳される。東京の大学に行った私は自分を「立派な日本人」と思っていた。しかし同級生たちは「あなたの日本語は少し違う、顔も黒いし雰囲気も違う」と日本人として認めてくれなかった。こうやって従属させていく。同化政策の罠だ。私たちは奪われた言葉、遺骨、琉球民族としてのマブイ(魂)を取り返していく。世界の先住民族5億人がこのようにして闘っている。