日米軍事一体化が加速
空洞化する文民統制

岸田首相は1月9日から14日にかけて、フランス、イタリア、英国、カナダおよび米国を歴訪し、各国の首脳に対して昨年末の安保関連3文書によって日本が安保・防衛政策を大転換したことを報告し、とくに「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」や「軍事費のGDP比2%への増額」について「バイデン米大統領から全面的な支持が表明された」と胸を張った。
元内閣法制局長官の坂田雅裕氏は、今回の改定によって「憲法9条2項は死文化した」(『世界』2月号)と述べている。憲法を変えたいのであれば正々堂々と国民投票を行って信を問うべきだ。それがこの国の最も大事なルールではないのか。岸田首相の言動は「米国大統領の全面的支持の表明」を取り付けさえすればルールを無視しても構わないと言わんばかりだ。このようなことがまかり通る国は法治国家でも民主主義国家でもない。
1月12日にワシントンDCで行われた日米外務・国防担当閣僚会合(2+2)の共同声明は、3文書改定で掲げられた自衛隊の「統合司令部」新設に言及し、米軍と自衛隊が指揮統制機能における一体化を進めていくと明らかにした。統合司令部とは、陸海空の3自衛隊の部隊運用を一元的に行うもので、あわせて「統合司令官」が新設される。統合司令官と作戦を調整するのは米インド太平洋軍司令官だ。
「有事」においては、統合司令部はすみやかに日米合同司令部に移行することが可能だ。その場合、米軍の指揮統制下で作戦に従事する自衛隊を日本政府が統制することは極めて困難になる。読売新聞でさえ統合司令部の新設には「首相や防衛相が自衛隊を指揮統制する体制を堅持することが大前提」(22年12月1日)と懸念するほどだ。
岸田政権による「9条の死文化」を既成事実にしてはならない。3文書改定を白紙撤回させる民衆運動を直ちに始めなければならない。