石川さんを夜間中学へ

狭山再審をめざし、この冬、キャラバン行動を行っている。
12月17日、釜ヶ崎「ふるさとの家」でスタート集会。「石川さんを夜間中学へ」と、桜井克典さん(ひょうご夜間中学をひろげる会・事務局長)と小野順子さん(狭山弁護団)に話してもらった。
読み書きができなかった石川さんが「脅迫状を書いて身代金を略取しようとした」などという荒唐無稽な有罪認定も許しがたいが、何よりも識字の問題を通じて当時も今も、読み書きができないで苦しんでいる多くの人びとが、「見えない」ままに存在していること。その人びとが「読み書きを取り戻そう」として苦闘していることの意味を学びたいと思っている。
識字にとりくむ仲間からは、「識字の本当の目的は主体的に生きることなんだ」と教えられた。
「再審無罪が叶ったあかつきには、みんなと机を並べて夜間中学に通いたい」と言う石川さんの言葉には、とても重い意味があるはずだ。
桜井さんは「石川さんが『机を並べて』と言っていることが大事なんです」と言う。そんな言葉の一つひとつに打たれた。
今、大阪では、文の里夜間中学と天王寺夜間中学が合併させられようとしているという。つまり、減らすということだ。
今も教育を奪おうとする者と、取り戻そうとする者の闘いが続いていることを知った。
小野弁護士の話から。今回、弁護団が尋問申請している11人の証人の中に、識字関係の鑑定人が含まれていることを知った。石川さんは、取り調べの中で一字一字、何度も何度も警察官に言われながら、文字を書いている。しかし、「がっこう」の小さい「っ」の字(促音)、「しゅうりこうじょう」の小さい「ゅ」や「ょ」の字(拗音)が書けていない。

脅迫状は書けなかった

ひらがなは原則的に一音に一文字が対応するが、促音や拗音のように二文字が対応する書き方を石川さんは知らなかった。だいたい促音は音としては読まないから、それを知らずに書くと石川さんのように「がこを」となってしまう。周知のとおり脅迫状には、ひらがな表記の誤りは皆無なのだから、これだけで石川さんが脅迫状を書いていないことは明らかなのだ。
集会には、とある夜間中学同窓会の人も来られていたことを後で知った。「これまでどうして夜間中学就学生の方々と結びつかなかったのか」と反省の弁をメールしたら、「こちらこそ、これまでなぜ石川さんの問題と結びつかなかったのか、ハッとさせられました。今も夜間中学にはたくさんの石川さんたちがいます」と返信をいただいて胸が熱くなった。
今、公立私立の夜間中学で学んでいる人たちは、ムラの高齢者だけでなく、若い外国人、不登校になった生徒をはじめ、様々な背景を持つ人たちがいる。文字を取り戻そうとする彼らの営みには、この社会を変える力、狭山再審を実現する力があると、ぼくは思う。獄中で文字を取り戻し、権力犯罪と闘ってきた石川さんは、彼ら彼女らの先達の一人なのだ。(狭山再審を求める市民の会・こうべ/高橋)

3月21日(火・休)
第7回狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西 ●正午開場 午後1時開会●大阪市西成区民センター/大阪メトロ四つ橋線『岸里』駅すぐ/南海電車『天下茶屋』駅から徒歩5分