
アメリカでは支払い能力を超えた高金利の貸し出しを、略奪的金融と呼ぶ。2013年、日本でカジノを合法化する法案が提出されたことに対して、「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」が発足した(14年)。その活動に当初からかかわってきた国際金融専門家の鳥畑与一さんが、カジノ設置の問題点について講演した(4日、大阪市内)。
依存症が収益源
「賭博で儲けようというのは大阪財界の堕落である」と鳥畑さんは批判する。夢洲カジノ建設で大阪の経済成長を期待するのは幻想だ。その理由を5点にまとめた。
①ターゲットは日本人 中国は依存症対策を強化している。その一環として刑法を改正して、海外へのカジノツアーの規制をはじめた。それによって夢洲に中国人観光客が来る見込みがなくなったため、ターゲットは日本人になった。ここで当初の計画とは大きく変わっている。
②地上カジノは収益減
カジノはオンラインに移行にしている。オンラインでは個々の賭け金が増えて、ばく大な利益を上げている。地上型カジノは世界中で大幅な収益減におちいっており、同じ地上型の夢洲カジノも破綻は目に見えている。
③MICEにカジノは必要ない 大阪府市は、「MICE(大規模な会議・イベント・展示)施設のために、カジノが必要」というが、カジノに依存しなくても、MICE自体の収益で採算はとれる。逆に、カジノ依存の施設は、カジノ収益悪化の影響をもろに受けてしまう。
④日本の観光価値を破壊 日本の観光競争力ランキングは世界一で、観光客は増えている。それは歴史的な日本文化や風景への憧れが強いからだ。カジノ建設で治安が悪化すれば、日本の観光価値が破壊される。
⑤依存症が収益に 借金をしてでも掛け続ける客の負け額が、カジノの儲けになる。カジノは収益を上げるために、ギャンブル依存症の客を増やし続けるのだ。

大阪市の財政が破綻
問題はまだある。大阪IRの事業者として正式に選定されたMGMは、事業収益が悪化しているため、自社が保有しているカジノを売却してなんとか株価を維持しているありさまだ。当初MGMが負担するはずだった夢洲の土地改良費等を大阪市が負担することになったのは、「同社が実質的に赤字状態に陥っていることが原因ではないか」と鳥畑さんは見る。
加えて夢洲の地盤沈下である。夢洲の地盤は、地下80メートルの洪積層まで支持杭を打設しても沈下する特異なものだ。技術的に未知の領域になるため、大阪市が負担する対策費の規模も不明のままだ。
鳥畑さんが指摘するとおり、夢洲開発とカジノ誘致を進めれば、大阪市は未曽有の「負の遺産」を抱え込んでしまうことになるだろう。この無謀な計画にストップをかけるためにも、4月の統一地方選では「カジノ反対」の候補に投票しよう。
(池内潤子)