牧志徳さんが描いたイラスト

組合の集会で、牧志徳さんが『カキルマジマ加計呂麻島のスウグァチ正月のシカマ朝~ニラヤカナヤの祈り~』の話をサンシンと島唄の合い間に語ってくれた。ニラヤカナヤというのは、沖縄や奄美諸島に伝わる神界を表す言葉で、年初にはニラヤカナヤから神がやってきて豊穣をもたらし年末にまた帰ると伝えられる。正月に、その年に生まれた赤ん坊を抱いて海に出て、まだ誰も踏みしめていない真っ白な砂浜に、オジたちは腰までつかり(加計呂麻島の海は暖かいらしい)赤ん坊を抱きあげて、足跡の印をつけて、海水(潮花・シュウバナ)をすくい赤ん坊の頭や背中をなでてやり、〝この子たちがすこやかに育ちますように、村々が平和で豊かでありますように〟と新年のティダカナシ太陽加那志(太陽神)に手を合わせてお祈りをする(風習がある)。そうこうしているうちに、潮が満ちてきて、先ほどの足跡を消していく。そうして、赤ん坊への願い、村人の平和や豊穣への願いがニラヤカナヤに届けられるという。
この赤ん坊の足跡が、人びとの願いとともに、太陽神によって運ばれていって、消えていく白砂の情景が映画のシーンのように鮮明に脳裏に浮かぶ。〈足跡が消えていく〉さまが太陽神によって〈願いがニラヤカナヤに届けられる〉ことが村人とそのコミュニティにとって、とても大切な尊い行為であることが分かる。自然の中に赤ん坊が生まれ、自然の中に平和と豊穣が育まれる、ひとつのストーリーとなって自然と人間の一体となった関係を、この伝承が、かたち伝えてくれることそのものが、とても素晴らしく思える。
そうして「ヤッサガフェイフォゥラエイ」との掛け声を合唱しながら、赤ん坊を片手に抱いて海からアシャギ(聖なる広場)につながる神道を行進していく。
いい話を、新年旗開き・春闘集会に聞かせてもらった。(石田)