2月23日、24日は、読谷を走る国道で「沖縄戦を忘れない。ウクライナに平和を!」というスタンディングをした。
前回に書いた、バンドゥーラの続き。チェルノブイリで、生後1カ月のときに被曝したカテリーナ・グジーさん。「琵琶のような、竪琴のようなウクライナの民族楽器。目に障がいを持つ演者が村々を回って演奏していた」と話した。ウクライナの村々は、コサックの伝統を持つ。コサックとはロシア帝国の南部、つまり今のウクライナに住んでいた人たち。スキタイ族の末裔などが古くから住み着いていたウクライナの地域に、ロシア帝国や各地から逃れ流れてきた人たちが住み着き、それを指すようになった。

統制的ではない
    「辺境」の地

ウクライナとは辺境という意味でもあり、辺境こそ統制的ではないが自由と平等が存在していた。コサックとは「自由の民」を意味する。混沌の辺境ではあるが黒土地帯であり、自然豊かな地域のため人口が増え、タタール汗などの王朝国家から奴隷狩りにあうなどの圧迫を受け、武器を持ち要塞を作った。16世紀初めのころである。やがて周辺の王朝国家は、武力に優れているコサックを自国の警備として利用するようになった。
ロシア民謡が盛んなころ、ドン・コサックの頭である『ステンカ・ラージン』をよく歌った。

農村共同体 コモン

バンドゥーラは、ウクライナのザポリージャ・コサックの間で盛んに奏でられていた。ザポリージャはウクライナの真ん中を流れるドニプロ河の少し下流に位置し、欧州最大の原発があるところ。今はロシア軍が占拠しており、絶えず爆撃の危険に置かれている。
足腰の強さを見せるコッサク・ダンス。コサックたちの社会の基本は、農村社会である。選ばれた長老をはじめとする共同体の役員が中心となり、集落の生活を仕切った。ミール(農村共同体)である。
ミールは普通ロシアミール(ロシア共同体)に代表されるが、ミールという語はウクライナ語だったと言われる。ミールは別の言葉で言えば、斎藤幸平さんが解説しているマルクスの注目したコモンである。

国家の論理と戦争

国家は「コモンの顔をしていない」。特に近代国家になると共同体は崩壊し、国家の論理が働き大規模な戦争が起こった。それを解決する手段として国連ができたが、ロシアによるウクライナ侵略が起ってしまった。戦争の要因はNATOが東方拡大を慎まず、ロシアはウクライナを緩衝地域として位置づけたからであろう。地政学、国家の論理で戦争になり、民が大勢死ぬはめになった。
ザポリージャなどウクライナの東部をロシア軍が攻撃している。戦場になる前の村の姿が映し出されると、なだらかな草原の丘、川や池があり、林が茂るのどかな所だ。

森の小鳥 いずこ

かつてバンドゥーラを抱いた吟遊詩人たちは、そんな集落を廻っていた。
ウクライナの言葉で、ウクライナの隷従からの解放を歌った詩人シェフチェンコは、吟遊詩人たちに多くの歌を残した(1840年)。
怒涛さかまく ドニプロ大河 風すさびあれママくるい おおき巨柳 地に伏せ おりしも月あお白く 雲間にさまよえば 海原ただよう小舟ゆれて ま真やみに浮きしずみつ とり鶴も暁つげづ 村人声なし 森の小鳥いずこに トネリコ風にきしむ(『広きドニエプルの嵐』訳 関鑑子)
今、ウクライナの平和の祈りの歌となっている。
(富樫 守)