
労働組合を弾圧すれば支持率が上がると考えたユン・ソンニョル大統領は、昨年12月15日に開かれた第一回国政課題点検会議で、「労働改革を成し遂げることができなければ、労働問題が政争と政治的問題に流れ、政治も滅び、経済も滅びることになる」として、労働組合攻撃を強めている。
その一つが労働組合会計への介入である。韓国では労働組合に国や自治体が補助金を交付しているが、それが「労働組合の腐敗を生んでいる」として槍玉にあげたのだ。
12月18日の高位与党・政府協議会でハン・ドクス国務総理は「労働組合財政運営の透明性など、国民が知らなければならない部分について、政府は果断に要求する」と表明。つづく12月26日の首席秘書官会議でユン大統領は「労働組合会計公示システムを検討せよ」と指示。これを受けた雇用労働省は、2月に労働組合会計公示システムにかんする労働組合及び労働関係調整法改正案を提出。
ちなみに民主労総は日常的な経費として補助金を受け取っていないが、活動経費の3分の1を政府や自治体からの補助金として受け取っている韓国労総は重点的な調査対象となる。
次に槍玉にあげたのが、大企業正規職の労働組合である。一部の労働組合で非正規職の労働者の加盟を認めていないことが、「労働市場の二重構造」と「労・労間の搾取システム」(正規職と非正規職の格差)の原因となっているというのだ。これはデタラメな議論である。元請け―下請けという経済構造が、労働市場の二重構造を作りあげているのであって、その原因を労働組合に求めるのは見当違いだ。
1月18日、国家情報院が民主労総と全国保険医療労働組合などの事務所を突然家宅捜索した。容疑は「国家保安法違反」である。「民主労総のA氏が海外で北朝鮮の工作員と接触した」というものだが、まるで「民主労総や全国保健医療労組が組織的に北朝鮮と内通している」かのようなフレームアップを行った。
この弾圧の背景には、国家情報院の対共捜査権が警察に移管されることがあると見られている。国家情報院の前身である韓国中央情報局(KCIA)時代から対共捜査権を使って国家保安法違反容疑で数々の事件をデッチ上げ、逮捕・勾留・拷問をほしいままにしてきた。ムン・ジェイン政権は、20年、この対共捜査権を国家情報院からはく奪し、警察に移管する法改正をした。その施行が来年1月1日なのだ。ユン政権は対共捜査権を国家情報院に存置するための法再改正を狙っており、その世論づくりのための弾圧だ。