
岸田首相は3月21日、ウクライナの首都キーウを電撃訪問した。戦後、日本の首相が戦地を訪問するのは初めて。米紙ワシントン・ポストは「日本がアジアを主導する国として西側の立場でロシアに対抗する姿勢を強調している」と報じた。来月のG7広島サミットで、岸田首相は中台情勢を重ね合わせて、ウクライナ支援のイニシアチブを取ろうとしているようだ。
この訪問の前日20日、英国防省はウクライナへの劣化ウラン弾供与を明らかにした。ロシアは「人命を奪うだけでなく、環境を汚染し、健康被害を引き起こす」と批判したが、米国は「この種の弾薬はかなりありふれたもの」と一蹴した。
劣化ウラン弾は標的に衝突すると、ウランが高温になり侵入した内部を燃やし尽くす。このとき発生するウラン酸化物の微粉末は大気中に拡散し、呼吸、水、食物などに混入して、体内に吸収される。それが発がんなどの深刻な健康被害をもたらす。琉球大名誉教授の矢ヶ崎克馬氏は「劣化ウラン弾は微粉末になることによって地獄の兵器となる」と指摘する。湾岸戦争(91年)で劣化ウラン弾300トンが使用されたイラクのバスラでは、10年後のがん死亡数が20倍になった。このような兵器を「ありふれたもの」として何十年も使用してきたことが問題だ。
広島市は「(劣化ウラン弾は)国際人道法の諸原則に沿って、使用すべきではない」という見解を明らかにしている。その被爆地で核兵器使用を進める会議を開いてはならない。 (深田京二)