点数評価の難題

GIGAスクールとは、文科省が打出した「新しい学習環境」構想のこと。「子どもたちの資質・能力を育成」を目的に、数年計画で1人1台のパソコンやタブレットなどICT端末を整備する。これに教育現場は振り回されている。教育指導要領が改訂されたことを受け、教育現場の多忙化に拍車がかかった。
改定された学習指導要領は、「黒板とチョークの授業だけではダメ。タブレット等を利用し子どもたちがコミュニケーションをとり、思考力を高めていくことができる授業によって、一人ひとりの表現力がどのように向上したか、学びに向かう力がどのように高まったか評価せよ」という。無理難題だ。
文科省は「1人1台の端末が導入されたから実現できるはずだ」というが、現場の実態を知らないにも程がある。教育学者の多くも「地域や学校によって格差が生じる」と懸念を表明している。

トラブル多発
情報機器で1時間の授業をするのに準備がどれだけ大変か。プレゼンを作ったことのある人は分かるはずだ。不慣れなせいもあるが、低予算で投入された貧弱な環境。無線LANや生徒側機の不具合で「1時間の授業を丸々無駄にした」などのトラブルが多発。汗びっしょりで職員室に戻ってくる先生を毎日のように見かける。
一方で、研修には毎回顔を出すが、なかなか実践にこぎつけない教員もいる。「まずエクセルをマスターしてから」など、一から始める習性が身についている人に多い。エクセルの技量は関係ないのだが。

タブレット使用に問題

学校外の子どもの行動に対処が必要になることも。男子生徒が、他校生からクラスの女子の写真を送れと言われ、隠し撮りで画像を送付するということがあり、保護者から猛抗議があった。タブレット使用のルールづくりに膨大な時間を費やした挙げ句、このような事件が頻発している。
ネットでのいじめや、それが原因で自殺するケースも起こっている。ネットいじめの認知件数は、一昨年1・9万人から昨年度2・2万人と増加。文科省は「対策強化が必要」と言うが、「誰がそれを助長しているのか」と言いたい。一方的な指示を降ろしながら「責任は現場に」ということか。 (安芸一夫)