岸、安倍の「愛国」の系譜

内山雄人監督の政治ドキュメンタリー、『妖怪の孫』を観た。「妖怪」とは、もちろん「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介であり、「孫」とは安倍晋三である。
映画は安倍晋三の生い立ちから、歴代トップの在任期間中に行ったアベノミクスといわれた「格差と貧困」の拡大、それらが「自己責任」としてかたづけられたこと、明らかになった統一教会との癒着により選挙で「圧倒的な勝利」を重ね政策も歪めた、その構図をブラックユーモア、風刺を交え明らかにする。
私は、なぜ安倍は岸信介の孫と言われるのかに興味を持った。晋三の父、安倍晋太郎は「私は岸信介の娘婿ではなく、安倍寛の息子である」と言い、岸とは一線を画した。(安倍寛はリベラル政治家として生き、54歳で亡くなった)。
一方、安倍晋三は「安倍寛の孫でなく」あくまでも、「岸信介の孫」として右翼的思想に染まっていった。「岸信介を超えたい」というのが安倍晋三の悲願であり、そのため岸信介ができなかった「憲法改正」に執着した。
岸信介から脈々と引き継がれていった右翼や暴力団、統一教会をはじめとする宗教団体とのズブズブのかかわりを利用したのである。両者の利害関係は一致し、「選挙に強い」安倍政権が継続することになる。
内山監督は、「この映画が公開されると、自身だけでなく家族にもどう危険が及ぶか不安だ。家族とも相談したい。しかし、最後まで観ていただいたみなさんには感謝したい」と述べ、映画は唐突に終わる。
私たちは、内山監督の決死の思いを正面から受けとめたい。安倍思想との決別、安倍以上の思想的な転換を行いたい。国民、市民の声をまったく聴くことなく、安保政策の大転換と大軍拡、福島事故がなかったかのような原発への回帰と推進、対米追随と近隣諸国への敵視など、「異次元の反動政策」を打ち出し強行している岸田政権を倒さなければ。
安倍信三が残したもの。それが、私たちの直面する課題と責務であると思った。(川内)