青井未帆さん

集団的自衛権の行使容認や、安保3文書改定で「憲法」はどうなるのか。「戦争ではなく平和の準備を」「抑止力で戦争は防げない」という、青井未帆さん(学習院大教授、憲法)の話を聞いた(兵庫県弁護士9条の会主催、4月15日、神戸市内)。

説明しない首相

安保3文書の閣議決定について、「国会が機能しなくなり、説明になっていない。岸田首相は予算審議で『安保政策の大転換』と言い、防衛費は世界第3位になるのに、まったく説明しない。国会よりも先に米欧を歴訪して報告した」「これは政府(政治)が憲法を上書きする行為だ」と批判した。
1月施政方針演説では「1年を超え議論した」「外交には防衛力(軍事力)が必要」「大転換ですが、憲法、国際法の範囲内。非核3原則、専守防衛、平和国家をいささかも変えない」とのべた。青井さんは「議論をしていないし、〝大転換ですが変えていない〟といいつつ、じつは変えている。憲法軽視の最たるもの」と批判。また「外交には抑止力が必要というのなら、同時に安心の提供も必要だ」と話した。

国会軽視から無視へ

「こうしたことが、どのくらい人びとに伝わっているだろうか。いまだに『平和国家』だと思っているのではないか。憲法改正に匹敵する大きさであるにもかからず、それに見合った議論がされていない。かつての平和国家観は、安倍元首相による14年の集団的自衛権容認の閣議決定によって変えられた。わが国への攻撃がなくても、〝他国の防衛〟のために先制攻撃さえできる」。
「これらは、すでに執行段階にある。沖縄・石垣島へのミサイル配備では、はじめは防御的ミサイルと言いながら、攻撃的な長射程ミサイルになった。再び沖縄を捨て石にするのか。22年安保戦略では『国民の決意』を求めているが、次は『国民の覚悟』になる」。
青井さんは、このことを「先制攻撃的な戦略の執行段階が『わが街』のレベルになっている」と表現した。

共通の安全保障

では、どうするのか。「東アジアに敵を作らない『共通の安全保障』を促進し、市民が参画する多国間の安全保障を追求する。国家と国民は同じではない。どういう国にしたいのかを国民の側から投げかけなければ、決して説明されない。市民の反対(要求)があることは理由になる。例えば、在日米軍基地使用における事前協議を(市民の声で)実際に行わせることだ。当たり前のことを言い、声をあげ続ること」と結んだ。(竹田)