韓国のユン・ソンニョル政権は、前政権の脱原発政策を白紙化し、「原発最強国建設」へと転換した。昨年6月22日、ユン大統領は原子炉メーカーの斗山エナビリティー(慶尚南道・昌原)を視察した際、「原発業界は脱原発という爆弾が爆発して廃墟になった戦地だ」と述べた。さらに産業通商省と中小ベンチャー企業省長官に「戦時に安全を重視する官僚的な思考は捨てなければならない」と訓示した。
また韓国では社会の分断と対立が深まっている。与党や公的機関の関係者はムン前大統領を「金日成主義者」「北朝鮮に従属」「銃殺に値する」と公然と非難した。これによって極右勢力が「政府のお墨付きを得た」とばかりに勢いづいている。それは同性愛やフェミニズムをめぐる深刻な対立へと発展している。

米国の行動隊

ムン・ジェイン政権は、米国と中国との間でバランスをとることで、韓国の自律的な外交空間を確保してきた。これに対して、昨年11月、東南アジア諸国を歴訪したユン大統領が打ち出したのは、「韓国版インド太平洋戦略」だった。これは、米国を頂点とする韓米日三国のパートナーシップをうたうもので、事実上韓国が「米国の行動隊」となることを意味している。ユン政権は韓国の自律的な外交を放棄したのだ。
いまやムン政権の下で進められてきた朝鮮半島平和プロセスは見る影もなくなっている。ユン大統領は1月4日、昨年12月の北朝鮮の無人機による領空侵犯に絡んで、18年9月18日に南北が偶発的な武力衝突を回避するために結んだ「軍事合意」の効力停止を検討するよう大統領府国家保安室に指示した。

来年4月、国会選挙

昨年5月のユン政権発足から1年もたたないうちに、韓国の民主主義は破壊され、平和体制も崩壊に瀕している。来年4月、韓国では国会議員選挙がおこなわれる。この選挙が韓国政治の分水嶺となる。昨年夏から毎週土曜日、3~5万人規模のろうそくデモが続けられている。民主労総は今年7月にゼネストを予定している。これは市民運動などあらゆる勢力がユン政権と全面的な闘争に突入することを意味する。
韓国の民主化運動を支援することは、朝鮮半島の平和体制を回復することである。それは東アジアの平和の核心的な内容である。今年は朝鮮戦争の停戦協定から70年目となる。いまだに休戦状態が続いていることに危機の根源がある。平和協定の締結に向けて、南北対話、米朝対話を進めなければならない。